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竹中重治の罠

夜も更けた頃・・・ここは美濃の国、日根野弘就の屋敷・・・


一人の女忍者がその屋敷に忍び込んでいた。北畠具教配下の鷹である。彼女は首尾よくここに潜入を成功していた。


「やはりここは警備が手薄ね。えっ、忍び込むなら稲葉山城のほうがいいじゃないかって?これだから素人は」


頼まれてもいないのに彼女は説明し始めた。曰く、稲葉山城は潜入も離脱も難しい所らしい。むしろプロなら有力な陪臣の屋敷に忍び込むのがセオリーらしい (ほんまかいな)


さて、ここに忍びこんだのは訳がある。日根野弘就は斉藤義龍の信頼厚い人物であるし、そして今日の夜に竹中重治という男がくるのが分かった。これはなにか良い情報がつかめるかもしれない。


彼女は足音一つたてることなく、屋敷の中を動き、竹中重治と日根野弘就が会っている部屋の隣部屋に忍び込んだ。不用心な事に誰も護衛がいない。彼女はほくそ笑みながら、聞き耳を立てる。




日根野弘就と竹中重治の酒を飲みながら話している。その話題はどうしても今度の大作戦になるのは仕方がなかった。


「・・・お主も思い切った策を考えるものだな。木曽三川沿いに南下し桑名を取ろうとするなど」


竹中重治はうっすらと笑う。


「敵は小牧山に城を作るなど、防御を固めております。そこにのこのこ兵を出すなど愚の骨頂。その裏を突き、桑名を取り尾張、伊勢の連絡を絶つ。そして六角勢が南下して北伊勢を取ればもう北畠具教は袋のネズミにございます」


「まさか北畠具教も我らが桑名、長島方面から総攻撃するとは思いもしまい。慌てふためく様が目に浮かぶわ」


二人は大笑いであるが、隣部屋で聞いている鷹も思わず笑顔を浮かべる。


(まったくお二人とも口が軽いこと・・・もういいかしら)


日根野弘就と竹中重治はもうこの作戦の事を話しておらず、違う話題に移っている。このまま長居してもっと情報を集めるより、気づかれる前に撤収する方がいいだろう。


(では、さようなら口の軽い皆さん)


鷹は音一つ立てず、部屋から出て夜の闇に消えていった。痕跡一つ残さず流石忍びである・・・二人にはまったく気づかれていないはずであったが・・・



「・・・どうやら行ったようだな」


日根野弘就はそう言って立ち上がり、そっと隣部屋を見回す。そこにももう鷹の姿はなかった。


「まったくあんなに気配を出している忍びがいるとは・・・北畠家は人材難ですな」


「・・・だからこそ逆に使えるというものですよ」


二人はいやらしい笑みを浮かべている。おい鷹、馬鹿にされてるぞ。


「この話に引っかかるかな、北畠具教は」


「まあ半信半疑でしょう。だが、実際に大軍が桑名方面に現れたら疑問は払しょくされ確信に変わるでしょう。迎え撃つため、桑名に兵を集めたところに北から奇襲をかけます。北畠具教は目の前に大軍がいる以上動くに動けますまい、囮とは知らずにね・・・」


竹中重治はぐいっと酒を込んだ。そんな彼を日根野弘就は脅威なものを見るような目でみつめる。


(この若さでこの知略・・・まったく大したものよ)


「・・・では酒席の続きをしましょうか。私を抜擢してくれた日根野様の酒をいただきましょう」


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「ふはぁぁぁだから聞いてますかぁぁぁ、いかに義龍様がすごいかってぇぇぇぇぇ」


竹中重治は顔を真っ赤にして絡み続けている。


「分かった分かったから・・・お前、こんなに酒癖悪いとは」


竹中重治がもう何時間も義龍様の魅力について語っている。日根野弘就としてはたまったものではない。


(こいつと酒を飲むのはもうやめておこう・・・)


こうして夜はどんどん更けていき、結局この悪夢のような酒席から日根野弘就が解放されたのは朝であった・・・さて竹中重治の盛った毒を果たして北畠具教は飲むのであろうか。いや、それが毒と分かっていても飲まないといけないのか・・・


斉藤家の侵略はもう時間の問題となっていた・・・

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