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三人の妻たち

「殿!!殿!!!一大事でございまする」


一人の若い侍が大声をあげながら北畠具教がいる部屋に飛び込んできた。彼も汗だくである。


「きっ北の方様が清州城に参着!!殿に面会を求め、こちらに向かっております!!」


周りの家臣たちがどよめきをあげた。まったく予想外のことだからである。その証拠に誰も出迎えに行っていない。


「なぜ、ここに。伊勢におられるのでは」


皆そう思った。誰も聞いていないからだ。そして一番慌てたのが、この男・・・北畠具教である。


「なっなんだって!!!!おい、モブ聞いているか!!」


モブは首を捻った。


「いえその様なことは全然・・・あっそう言えば霧山城から使いが来ていたような・・・言うのを忘れてました」


北畠具教はモブの襟首を掴み、グングン振り回した。


「ぐぅぅぅぅぅ殿、苦しい」


「お・ま・えはなんでいつも言うのが遅いんだ!!!」


そんな事をしていて、お互い逃げるタイニングを完全に失ってしまった。部屋の襖が開き、顔を真っ赤にした北の方が入ってきた。これは市姫が怒鳴り込んできた時と同じ状態だ。まずい!!


「これはこれは北の方様!!出迎えもせず申し訳ありません」


家臣一同座りながら頭を下げた。それはまるで土下座に近い様子である。歴戦の強者ぞろいである者達が、思わずたじろいでしまうほどのパワーを感じたからである。


「出迎えご無用・・・さて殿、これは一体どういう事で」


北の方の視線は思わず後ろに下がってしまっている北畠具教に注がれている。


「あっ奥さん。どういう事って?」


「そこにいる女たちの事ですよ」


「あっ紹介するね、今度側室に迎えた市姫ちゃんと犬姫ちゃんだけど」


ああ悲しいかな、この北畠具教。まったく女心を分かっていないというか、なぜ火に油を注ぐのであろうか。北の方はワナワナと肩を震わしている。


「わっ私というものがありながら」


空気を読んだ市姫が慌てて頭を下げて弁解した。


「どんだご無礼を。織田信長の妹、市と申します。この婚姻はあくまで織田家存続の為。けっして北の方様を貶めるなどとは決してございません」


ここは少しでも場を落ち着かせないといけない。しかし犬姫は違った。いきなり北畠具教の腕に掴まったのだ。彼女の体の感覚が北畠具教に伝わる。


「ちょっと犬姫ちゃん、なにやってんの。近い近いって」


「やーん、このオバ様、怖ーい」


犬姫はあくまで一歩も引かず徹底抗戦するようである。そんなのは北の方が許す訳ないし、それに歳の話題は禁句中の禁句だ。


「オッ、オバ様ですって!!!この小娘め!!!」


「ちょっと奥さん、落ち着いて話せば分かる話せば・・・」


「問答無用!!!」


そんな夫婦の痴話喧嘩を見ていた家臣達・・・さっきまで林秀貞と揉めていた細野藤光がこう言った。


「・・・まあ今日は夫婦水入らずですな。我々はここで退散を。では秀貞殿、飲みに行きましょうか」


「そうですな、先ほどは我々も言いすぎました。では、そういう訳で・・・」


家臣たちは立ち上がり、ゾロゾロと退席しだした。


「おい、さっきまでの勢いどうしたんだ。逃げるな!!!」


北畠具教は呼び止めるが、みんな聞かぬふりして逃げ出した。モブはもうとっくにいない。


「さあ、殿。じっくりと話を聞きましょうか!!!!」


・・・


・・・・・・


まあこの後の修羅場は割愛するが、結局こうした紆余曲折の末、三人の美しい女達が傍にピッタリとつくという幸せなのかそうでないのかわからない状態になっていったのである。




さて一方、北畠具教おかかえの女忍者である鷹は美濃斉藤家の重臣、日根野弘就の屋敷に忍び込むことに成功したのであった・・・


それは北畠具教に利するものであろうか・・・それとも・・・


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