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戦国の妖蝶

ここは大和と河内の国境にある信貴山の山上に築かれた山城である信貴山城。松中久秀の居城である。


そこには松永久秀の配下の者達が集まっていた。その中から沢城城主、高山友照が発言した。


「北畠具教が泣きついてきたとか。名代、どのような内容でしょうか?」


配下の者達は、まさに武将らしく男達の集まりであった。そんな中、上座に座る名代と言われる者だけは明らかに違った。


歳は三十後半・・・もしくは四十か。そして妙な色気のある女性であった。艶やかな着物を着ており、まさに場違いであるが皆それに言及しない。


「他愛もない事よ、物の流通の邪魔をしないでくれってさ」


「名代、ここは斉藤家と組み、物流を止めますか?斉藤義龍からも北畠包囲網に加わるよう話がきております。我等に伊勢一国を与えると・・・」


名代と言われた女が高笑いをする。


「ハッハッハッ、友照、あんたそんな話を信じているのかい。そんなの義龍の空手形に決まってるじゃない」


(くっこの女、図に乗りおって。しかし松永久秀様の名代である以上耐えるしかないか)


高山友照は押し黙って耐えるしかなかった。それはいつの頃であったか。気がつくとこの女が松永久秀の傍に仕えるようになった。そして松永久秀は姿を消した・・・この女に全権委任状を渡して・・・


当然、家臣団から反発もあったが、そうした者達はことごとく不慮の死を遂げたのだ。それらがあってもう誰も反論しなくなっていった。


そして不思議な事に三好長慶など三好家からもなんの措置もなく、この女が名代になることに異論が出なかった。兵達はみなあの女の手篭めにされたと噂していた・・・


「忍びからの知らせだと六角と斉藤は同盟組んだ時、あのボンボンの六角義治に伊勢一国与えると言ってるんだよ。義龍は私達になにも与えないつもりさ」


斉藤義龍は伊勢の支配権を餌に釣ろうとしていたのだが、この女はそんなのは信じられないと早くから直感していた。


「六角と私達は犬猿の仲なのよ。北畠を倒したら、どうせ六角とうち達が揉めるんだから、まとめて飲み込もうとする腹よ斉藤義龍は。まあ、あの坊ちゃんはあっさり騙されたみたいだけどね」


松永久秀は三好家の家臣である。その三好家と六角家は近年揉めてばかりである。江口の戦い、北白川の戦いと六角定頼の時代から十年に渡って戦いが頻発している。そんな中、「今のところ」三好家の家臣である松永勢が六角に組することは出来ないのである。


「・・・北畠の荷を通してやりな。東海道ではなく伊勢街道が栄えれば、こっちの利も大きい。存分に儲けてその後は・・・」


名代と呼ばれる女は何かを言いかけたが、その後の発言は皆は聞き取れなかった。兎に角、何かをたくらんでいることは明白ではあった。


「はっ仰せのとおり、北畠にはそのように返答しておきます。あと、三好長慶様から飯盛山城に登城するようにと仰せがありました」


「フッフッフッ、あのおじ様もすっかり私に入れあげて・・・いいわ、これより登城すると伝えよ」


まさに妖蝶のようだと高山友照は思った。その妖気に誑かされてはならないと自分に言い聞かせた。


(この女を早く排除しなくては・・・しかし三好家家中はもうダメだ。いっそ北畠具教に・・・)


そう高山友照が思っていた時、その名代と呼ばれる女は書状を見ていた。


(この字の感じは女の者か・・・北畠具教、何故女子にこの書状を書かせた?なにか意図があるはず・・・しかし掴みようのない男だな)


こうして松永勢は斉藤家の誘いをやんわりと断り、北畠家の助けに応じる姿勢を見せた。しかし兵は一兵たりとも送るつもりはないという態度でこのまま進んでいく。


さてこれから畿内はどうなっていくのであろうか・・・

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