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問題は常に山積している

再び北畠家の家中の話になります。


斉藤家が北畠家打倒の謀議を繰り広げていた頃・・・ここ清洲城でも重大な問題が発覚していた。


桶狭間の戦いから数ヶ月たっており、ようやく尾張国内や清洲城の普請も進み、小牧山城の築城も雪姫や木下藤吉郎の手によって順調に進んでいた。


そんな北畠具教にとって、予想外な報告が神戸具盛からもたらされた。


「えっっ、物流が滞っているって?」


「ははっー、六角家が突然、荷改めの強化や人の移動の制限をかけ始めており、京からの物流に重大なる影響が出ておりまする」


神戸具盛は顔を真っ青にしながら報告している。彼は街道の整備や物流など運輸関係の政務を担当していた。その為いち早く六角家の態度変化を掴み報告に来たのだ。


「そういえば最近、競馬場とかの客の入りや物が減ったような・・・」


「さすが殿、気付いておられましたか。今のままでは内政にも影響が出てきます。ご対策を検討の程を」


北畠具教が遊び場が少ないと趣味で作った競馬場。これが意外に当たり、京から人や銭が流入していた。調子に乗って清洲にも作ったのだが、これでは客足に影響が出てしまう。


また尾張と伊勢が同じ領主になった事で、関所の税金も取ることをやめていた。そして桑名町衆も商圏を広げた事により活発に物資をあつかい始めた。これらにより尾張の品も安く早く、大量消費地の京に送れるようになっていたが、途中の近江でバカ高い税や余分な時間を取られては価値がなくなってしまう。


「うーんと・・・えーと・・・そうだな、鳥屋尾さんなんか手はあるかな?」


鳥屋尾満栄は家老筆頭であり、もっとも頼りにする人物である。そんな彼にとりあえず助言を求めた。


「なんとかしばらくは持ちますが、銭の流れが止まれば兵力の強化や普請に影響がでます。とりあえず六角家に抗議と賄賂の緩急をつけた対応をしましょうか。しかしそれもどこまで効果があるか・・・」


六角当主だった六角義賢と北畠具教は義理の兄弟であった。正室北の方の兄である。まあ国が隣同士なのでやり合う事も多々あったが、それでも友好関係ではあった。これにより京→近江→伊勢→尾張という多くの人や物が出入りするネットワークが完成していのだが・・・


しかしそれも僅かな期間であった。野良田表の戦いで六角義賢は大敗し、嫡男六角義治にその地位を追われたのだ。そして六角義治は斉藤家と同盟を組み、反北畠の旗印を鮮明にしていた。


「しかし殿、対処療法ではジリ貧です。問題の根幹である斉藤家をなんとかしないと」


「おっさすがは市姫、賢いなー。えらいえらい」


北畠具教は隣に座っている金髪の美少女、側室である市姫の頭をナデナデしてあげた。彼女は現在北畠具教の秘書の地位に納まり、数々の助言をしていたのである。


「・・・私は別にあんたの為じゃなくてみんなが困るから・・・って、また私に政務を押し付ける気でしょ!!!」


「うわぁぁぁ、やっぱりばれたか!!」


この市姫の北畠具教の喧嘩はしょっちゅうであった。まあ喧嘩といっても本気じゃなく、むしろ微笑ましいのだが、もっと別のめんどくさい問題が家中にはあった。


「あらあら二人は相変わらず仲が良いことで・・・でも今回の問題は六角家。やはり六角など・・・」


市姫の隣には姉の犬姫が座っていた。犬姫は長い黒髪をしており、普段はのほほんとしている美少女である。その犬姫がどこか棘がある言い方をしていた。そして手元には物騒な事に火縄銃を置かれていた。


「・・・あら犬姫さん、わたくしの実家になにか?」


北畠具教の隣、丁度犬姫の向かい側に正室である北の方が座っていた。歳は三十手前だが、(三十と言うと激怒するので皆は言わない)その美しさは更に磨きあがりどこか大人の魅力に溢れていた。


「いえいえなにもありませぬ事よ。あなたの実家 (大声)のせいで大変なだけで」


「あらあら小娘が言いますね・・・もう我慢出来ませんよ・・・」


これはいけないと北畠具教が悟った。ってかこの二人は特に揉めまくる。原因はその時色々あるのだが、最大の焦点はこれである。


「この年増!!殿はわ・た・しの方が好きなんですからね!!!」


「小娘風情の女狐!!絶対にまけないから!!!」


ようは殿であり旦那である北畠具教の取り合いであった。まず犬姫の方だが、もともと家中の女の子のなかでかなりチヤホヤされていたのだ。それが市姫が台頭。そして正室である北の方が伊勢からやって来た。もともとヤンデレ気質である彼女は、寵愛を一身に受けないと気がすまないらしく暴走するときがあった。


そして北の方であるが、名門六角家の娘であり第一に正室なのであるからプライドがあるため、ぜっっっったいに殿の寵愛を受けなくてはならないと思っていた。そしてこうなるのである・・・


犬姫は手元にある火縄銃、そして北の方はなぜか手元に置いてある弓を手に取った。北の方の兄である六角義賢は日置流という弓の名手であり、彼女も小さい時から教えられていた。


「あっダメですよお姉さま!!!落ち着いて!!!」


「北の方様、殿中でござる。お止め下さい!!!」


市姫が犬姫を、そして鳥屋尾満栄が北の方を羽交い絞めにして止めようとする。そして北畠具教は揉める二人に割って入ろうとしている。なにせ二人の旦那であり、やりあう所など見たくないからだ。


「ちょっと二人とも落ち着いて!!って・・・うわぁぁぁぁぁ」


丁度その時、犬姫が振り下ろした火縄銃が北畠具教の頭上に。そして北の方が振り回した弓が顔面を襲った!!


ゴーン!!ガーーーン!!


「きゃぁぁぁ殿!!」


「殿、大丈夫ですか!!!」


強烈な衝撃に襲われて北畠具教はその場に倒れてしまった・・・



・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「殿、本当に申し訳ありせん」


「本当にごめんなさいです」


北の方と犬姫が正座して頭を下げている。とりあえず北畠具教の身体を張った行動によって、争いは収まったのだ。


「痛てて・・・お願いだからもう揉めないでね・・・」


引っくり返っている北畠具教がコブが出来た頭を押さえながら言った。顔にも弓の跡が出来ている。そんな時だが鳥屋尾満栄はなにか思いついたらしく、こう助言をした。


「・・・殿、お痛みの所申し訳ありませんが、物流についてなのですがあまり仲は良くありませんが大和の松永久秀殿に書状を送っては・・・」


「松永久秀・・・?それどんな人?」


鳥屋尾満栄はすごく困った顔をする。


「三好長慶殿の一番家臣で大和を治める方なのですが、どうも最近様子がおかしいと噂が。もともとは三好長慶殿に忠実な家臣との事でしたが、近年独自行動が目立ってます。危険かもしれません・・・」


「でも滋賀・・・じゃなかった近江がダメなら大和を通らないと京への道がないんだから仕方がないか・・・市姫、悪いけど一筆書いておいて」


「・・・結局私がするのね・・・でもみんなの為だからやるわ」


こうして北畠家は京へのルートを確保する為、松永久秀に書状を送る事となった。これがまた畿内のめんどくさい揉め事に関わる羽目になる第一歩になっていくのである。そしてまだ見ぬ松永久秀なる人物はどんな人であろうか?


そしてそもそも何故、市姫が秘書をしているのか。それと犬姫が火縄銃を持っている訳、そして伊勢にいる筈の北の方が何故尾張に来たのか。それらの疑問を解かなくてはならない。まずは、大和の松永久秀からである・・・

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