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北畠具親の決断

ちなみに長男が北畠具教、次男が木造具政、三男が北畠具親になります。

次男、三男が逆かもしれませんが、この作品ではこれでいきます(いい加減)

屋敷の中に案内された北畠具親は、奥の部屋で兄である木造具政と久しぶりに再開した。


「おう、よく来たな、まま、一杯やろう」


「僧籍の身なので、その儀はご勘弁を」


久しぶりに会っただけに、懐かしい会話に花が咲いた。しかし、次第に北畠具親は不可解な事に気付いた。


(兄上は、さっきから他愛もない話ばかりしている。こんな事の為にわざわざ呼んだのか?)


「ところでご用件というのはなんでしょうか」


なかなか用件を切り出さないので、こちらから聞くことにした。わざわざ大和からこっちに呼びつけるぐらいなのだから、ただ昔話をするだけではないはずだ。


木造具政は、なにか決意するかのようにグッと酒を飲み干した。


「実はな・・・俺達の兄上である殿の事だ。最近ではもともと宿老の鳥屋尾はともかく、毛部(モブ)とかいう素性も知れぬ者を側近として重宝し、一門衆をないがしろにしている」


木造具政は語気を強めた。


「学校なるものを作って人材を取るなど、一門衆を政治から外す意図がみえみえだ。それに如何わしい競馬場やら作る事は名門北畠家の名を下げる行為だ。おまけに姫の雪を戦にだそうとしている。やはり殿はうつけよ」


「されど主君の命なら従うのが道理と心得ますが・・・」


北畠具親はとりあえず諌めた。


「兄上の専横を止め、北畠家を正しい道に戻すのは一門衆筆頭の俺の使命ではないか」


しばし沈黙が続いた。その沈黙に耐え切れないように北畠具親が口を切る。しかしそれを口にするのは躊躇いもあった。


「・・・まさか挙兵を・・・」


木造具政がおもむろに手を握ってきた。手には力が入っている。


「その時はお前も力を貸してほしい。二人で北畠家を正道に戻そうではないか。それに賛同する者も家中でも少なくないぞ」


木造具政はなにやら書状を持ち出した。どうも挙兵に賛同する者の誓詞血判らしい。


「お待ちください。そんな事をしていたは伊勢の国が乱れます。なにとぞ思い止めください」


「・・・なら、一度今の殿を見たらよい。見ればこちらに道理があるのが明白、噂通りのうつけ者よ」


「明日にでも登城してみます。あとこの事は内密にしておきます」


こんな事を報告したら伊勢の国は真っ二つになり、他国から侵略を受けてしまう。


「おうくれぐれも他言無用。まあ事が漏れたら、これ幸いだ。逆に打ち倒してくれるは」


木造具政は高笑いしているが、北畠具親は顔が真っ青になっていく。


(こんな事になっているとは・・・私もこの企てに加担すべきなのか・・・)




次の日、北畠具親は街の周りを見て回った。


(以前より活気があるな)


新しく出来た競馬場はかなり盛況のようだ。多くの人々が集まり、それを目当てに露天なども多く出ている。このような銭が飛び交う欲にまみれた光景は、僧侶としてはあまり好ましく思わないが、国の発展を考えると良いことなのかもしれない。


次に、学校なるところに向かった。着いてみると、思ったより質素な所であった。自分の身分を明かすと、中に案内してくれた。


驚いたことに男と女が一緒に勉強している。このような事は今まで見た事が無い。殿は女の子がいないと勉強に力が入らないと言うのでこうなったと係りの者が言う。


「なっなに、殿もここで勉強しているのか」


「まあ成績はあまり芳しくないですが・・・あっこのことは内密に」


係りの者はそう言って笑ったが、北畠具親は感心してしまった。


(自らの無知を平気で晒しているのか。そしてそれを克服しようとしているのはなかなかのもの。愚か者は己の無知を隠すからな。殿は器が大きいのかもしれん)


「卒業時に成績優秀者は身分に関係なく登用されるので、かなり熱心にみんなやってますよ。まあ殿は可愛い女の子を優先して取るんじゃないかともっぱらの噂ですが」


(殿は女子でも優秀なら登用するというのか。たしかにこんな事をしていれば反発もおきよう・・・)


見学を終えた北畠具親は兄に会うべく城に向かった・・・




「殿、弟君である北畠具親殿が参られました。よろしくお願いします」


俺に突然モブが話しかけてくる。


「おいおい、よろしくお願いしますってなんだよ。そんな弟のいるの聞いてないぞ。昔話されても分からないぞ、本当にいい加減だな」


「どうせ元々考えもなく話しているんだから普段通りで大丈夫ですよ」


「なるほど、いつも通りアホ顔で話せば良いのか・・・って俺の事バカにしてるだろ」


「私はそこまで言ってないですよ」


そんなくだらない事を話しているうちに北畠具親がやってきてしまった。俺は慌てて上座に座った。


「ご尊顔に拝し恐悦至極であります」


北畠具親はそう言って顔を上げる。俺の顔は叩かれた後のようにあちこち膨れている。


「殿、一体それはどうされたのですか」


「むりやり剣の稽古させられて、こんな事に」


「殿が下手糞なだけですよ、プッ」


「うるさいよ、あといちいち笑うな!」


俺はモブを叱り付ける。


「殿は勉学だけではなく、剣もかなり熱心にやっておられるのですね。感心いたしました」


おっなんか感動してる。まあ俺の能力が低いからこんな苦労してるんだが・・・


(新しい事を起こす勇気、そして自らを飾らない態度、皆はうつけと言うがこれは大人物になるかもしれん。さてどうしたものか・・・)


北畠具親はしばらく考えた。はたして異端の才能か只のうつけか。しかし自分の身体の血が熱くなるのが分かった。一人の僧侶として生きようと思っていたが、武将の血が滾ってくる。


「・・・あのー急に黙ったけどなんかあった?」


「殿、私は還俗し、武将として殿の下に加えていただけないでしょうか」


「あっうん、いいよ」


「殿、相変わらずあまり考えず言いますね。まあ、いいですけど」


モブが突っ込んできたが、俺は無視した。とにかく弟なんだし、人は多いほうが良いだろう。


「ありがたき幸せ」


(殿の実力、身近からみさせていただきますよ・・・)


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