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市姫との出会い

「・・・とりあえず今日の評定はこれくらいでいいかな、しかし疲れた・・・」


北畠具教がゲッソリと溜息をついた。なんだか色々あってやっとここまで来た。もういい加減休みたい。


「殿、実は尾張守護であった斯波義銀殿から私宛に手紙が届いております。北畠具教様の取次ぎを願いたいと。おそらく守護職復帰に手を貸して欲しいという事であろうかと」


林秀貞が申し訳なさそうな顔をしながら報告した。なになに斯波義銀って誰だ、そもそもどう言う事だ。


「信長様がうっとおしいから尾張から追い出したんです。それから斯波義銀殿は落ちぶれておりまして・・・」


「たしかに斯波義銀殿を守護に復帰させれば我等北畠家の大義名分も立ちますな。侵略ではなく斯波義銀殿の守護復帰の為に動いたということになれば幕府もいい顔をするでしょう」


「しかし傀儡として置くと後々面倒なことになりませんか?なんだかんだと政治に介入してきて結局破綻するだけかと。それに今更、幕府の顔を立てなくてもよろしいかと」


家臣達がそれぞれ勝手な意見を言い出し始めた。なんだまた面倒な事になってきたぞ。おいもう今日はいいだろう、休ませてくれ。座りっぱなしでお尻も痛いんだよ!!


「殿、そもそも幕府にはどのような対応をとりますか?幕府も今苦境に立たされています。手を貸しますか?」


「窮乏しているのは朝廷も同様。それに対する対応はいかがしますか?」


あわわわ、また話す事が増えたぞ。ひぃぃぃぃ・・・


「桶狭間一体の農民から、取り締まりを求める訴えが出ております。織田、今川、そして北畠軍から脱走した足軽が賊になって悪さしておるとの事」


「殿、熱田神宮から・・・」


「殿、街道筋の整備が滞っているとの・・・」


もぉぉぉぉうダメ、こんなに一杯すぐに処理なんでできないぞぉぉぉ・・・という北畠具教の心の声が聞こえたのか、モブがそっと近づき耳打ちをする。


「どうですか、部下に委任すれば煩わしい事務処理が簡単になりますよ」


「もっとはやく言えよぉぉぉぉ」


「いやなんか殿の苦しむ顔を見るのが楽しくて、ぐぅぅぅぅ苦しいです!!」


思わずモブの首を絞めてしまった。ふー落ち着け、こんな事しても話が進まないからな。とっとと委任とやらをしてしまおう。


「どうすれば委任できるんだ!!」


「簡単ですよ、部下に役職与えたら、ゲホゲホ、その任にあった行動をしてくれますので、後は部下が決めてきた事の最終的な決裁をするだけです。この紙に役職名があるんでそれに名前を埋めれば・・・」


「そうか、とっとと埋めてしまおう・・・ゲッ!!」


その用紙を見た俺は、思わず絶句してしまった。どうせ内政とか外交とか二個か三個埋めれば良いと思ったのだが、やたら一杯役職がある。それにこの時代になさそうな名前の役職もあるぞ。


「なんだこの膨大な数は!!これ埋めるだけで時間がかかりすぎるだろ!!!」


「そんな事言われましても、そういうゲームテザインですし・・・まあ時間かかりますけど埋めてしまえば後は楽になりますから」


「分かったよ、やるよ。かといって適当に入れると後が大変だしな。ここはステータスを見比べながら適材適所を・・・」


北畠具教が用紙を見ながら人材の埋め込み作業をし始めると、鳥屋尾満栄が申し訳なさそうに話し始めた。


「・・・あのー殿、時間がかかりそうなので、もし宜しければ我々は退室してよろしいですか。これから予定が・・・」


「えっ、まあいいか・・・埋めるだけだし。皆も色々な仕事しないといけないしね」


「いえ、これから北畠家家臣団と織田家家臣団で飲み会をするんですよ。場所は養老○瀧です」


「なんか現実的な場所設定だな・・・よし、俺も行くか・・・」


その時、部屋の外から女の声が聞こえた。甲高い若い女の声だ。そしてそれを制しているかのような男の声も聞こえる。


「ちょっとなんで私が会った事もない男と結婚しなくちゃいけないのよ!!」


「市姫様、お声が高い。聞こえてしまいますぞ」


そしてドタバタと派手な音が響いた後、大広間の障子が開かれ、一人の若い女の子が入ってくる。それを見た織田家家臣団は慌てて頭を下げる。


その少女は、明るい金色の髪をツイテールにしている。きりりとした顔つきは可愛いというより美人といった感じだ。身体はスレンダーな感じで、まだ大人とはいえない身体つきである。美しく派手な柄の着物を着ているが、それに負けないほどの美貌を備えている。


北畠具教はモブに小さい声で語りかけた。


「・・・おい、なんで金髪なんだ。この時代にはいないだろ」


「・・・ですが、あの妹と恋愛するラノベのあの子も金髪で青眼だったじゃないですか。日本人でもいるんですよ、普通に」


「・・・全然説明になってないぞ。しかしそれより怒ってないか、あの娘」


ヒソヒソ話している北畠具教にどんどん市姫が近づいてきた。いい香りがする、香でも焚いていたのであろうか・・・


「貴方が私の旦那になる北畠具教って人ね。兄様を討った人と仲良くなんかしないからね。べーーーだ!!」


市姫は彼女の小さい口から、これまた小さくピンク色した舌を出た。挑発しているみたいだが、なんか可愛い。そしてそのまま帰ってしまった。


皆シーンとするが、震えるような声で鳥屋尾満栄が話し始めた。


「いやなかなか大人しくて良い姫ですな。殿とお似合いですよ。では、我々はこの辺で・・・」


「どこが大人しいだよ!!適当に言ってるだけだろ!!それに待て、俺も飲み会に行く」


立ち上がろうとした北畠具教の腕をモブが掴みかかる。振り放そうとするが、凄い力だ。とても離せない。


「殿はこれ埋めるまで出歩いたらダメですよ。終わったら次は市姫のご機嫌取りです」


そうこうしている内に、家臣達はそれぞれ楽しそうに談笑しながら立ち去っていた。その中、北畠具教は泣きながら委任作業に取り掛かるのであった・・・




清洲会議は終わったが、物語はまだ終わらない。なぜなら、そんな北畠家をある者は警戒し、ある者は擦り寄り、そしてある者は滅ぼそうと思い始めていたからである。



(清洲会議編、終わり)

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