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戦いの終わりと支配の始まり

満天の夜空を鳥屋尾満栄は眺めていた。昼はあれほど嵐のような天気だったのに、もうそんなのが嘘にように澄み切っている。美しい星が目に入ってくる。


「・・・とりあえず一段落だな。ふー、一杯飲みたいところだな」


そんな感傷に浸る鳥屋尾満栄に、一人の男が近づく。


「交渉お疲れ様でしたな、鳥屋尾殿」


鳥屋尾満栄が振り向くとそこには、主人公の弟である北畠具親が立っていた。


「具親様ですか、お待たせしましたな」


「いえ一向に構いませんよ。とにかく後は残務処理ですな。しかしここまで我々がやれるとは思いませんでしたよ」


鳥屋尾満栄がふーと息を吐く。


「たしかにですな・・・それも殿のおかげ。誰もが反対した尾張侵攻をここまで上手く出来る人は殿おいて他にない」


「御意にございます。私もこれほど血が滾った事はありませんでした。兄上は凄いお方だ・・・」


二人は夜空を眺めながら、熱い血潮が滾っていった。この殿に死ぬまでついて行こうと思いながら・・・




「雪姫様、警護の方は万全にございます。今日はお疲れでしょう、ごゆるりとお休み下さい」


部屋の入る事無く一人の侍が襖越しに雪姫に報告している。ここは清洲城の中のある部屋。雪姫は一部屋徴収して寝床にしていた。鎧も外しているので、先ほどまで死闘を繰り広げていた姫とはとても見えなかった。気品が漂い若々しい姫君にしか見えない。


「私はともかく父上の警護は間違いがないように。私の警護はそんなにいりません」


部屋の中から雪姫の声がする。


「殿の警護は固めております。あと清洲城にいた織田勢の多くの者達が、守ってくれた恩返しをしたいと雪姫様の護衛に志願しております。いまや雪姫様の名声は尾張中に!!」


「やめなさいそんな話は!!私の名声などどうでもいいです。とにかく父上をしっかりとお守りするように」


「ははっ申し訳ありません」


そういってそそくさと侍は去っていった。雪姫は部屋で一人、ただ自分の手を眺めていた。細く白い手と腕。まさに少女のそれそのもの。しかしその手は今日血に染まった。


(私は・・・どうなっていくのかしら・・・)


雪姫は悩みながら呟くのであった・・・




「頭、頭ったら、幾らなんでも護衛多すぎやしませんか」


「頭って言うな、盗賊みたいだろ!!」


「・・・実際盗賊みたいなものだし」


「それもこれもお前達がわるいんだろ!!どこに刺客がいるかわからん」


ここも清洲城の一室。清洲城陥落の大功があった木造具政も部屋で休んでいる。その部屋の周りは物々しい兵士達が厳重に警備していた。


「あんだけ城内好き勝手にしていたら、そりゃ恨まれて狙われますよね」


「分かったらちゃんと警備してろ。兄上の方にはこっちから兵を回さなくてもいいからな。そっちはどうでもいいからこっちを固めろ」


そう言って木造具政は布団に潜り込んだ。ようやく畳の上でゆっくり休める感覚を味わっている。


(今回は上手くいかなかっが必ず兄を排除して、俺が家中を牛耳ってやる・・・zzzzz)


そんな邪な思いを抱きながら、彼は眠気に襲われるのであった・・・




「ううっっっ痛い・・・なかなか痛みが引かないな」


皆がそれぞれの思いを抱いていたころ、我らが主人公北畠具教は、布団の上で俯せ寝で休んでいた。部屋の中には誰もいないが、その外には雪姫の兵をはじめとした護衛達が溢れかえっていた。


そんな中、部屋の天井の板が外れ一人のくのいちが飛び降りてきた。配下の忍びの鷹である。


「殿、鳥屋尾満栄様と今川家との話し合いを終わった模様です。今川勢は退くとの事」


「あれ、尾張は今川家が押さえる話だったのに気が変わったのかな。じゃあ残った僕達が尾張の面倒を見ていかないといけないのかな」


「おそらくそうなるかと。ってか殿が清洲城に入ったので皆そうなると思っています。あと近々にでも家中で会議をして体制を決めなくてはなりませんね」


北畠具教は大きく腕を伸ばした。嫌な感じがしてきたからである。


「信長を倒して身の安全を図りたかったのに、逆に事態がよけいややこしくなってきた様な・・・」


「殿、なんて気弱な事を。皆々様、殿のついて行くと申しておりますよ」


そう言って鷹は北畠具教を励ましている。


(なんか知らないが北畠具教としてゲーム世界の戦国時代に来てしまったが、俺はただの一人のニートだったはず。それがゲームの世界とはいえ信長を倒して、こうしてついてくれる人もいる・・・しかし痔までこの世界にもちこまなくてもいいだろう)


今まで味わったことの無い満足感と達成感、そして先の読めない不安、あと痔の痛みに悩まされながら、北畠具教は眠りにつこうとしていた・・・




(風雲清洲城編終わり)

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