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勝手にどんどん話が進む

「北畠具教様、清洲城にお着きになりました!!」


一人の若武者が勇んで雪姫に報告した。清洲城の後始末もまだまだ終わっていないが、ここは当主を出迎えなくてはならない。


「分かりました、すぐ向かいます。ところで叔父上は・・・」


雪姫はあたりをキョロキョロとする。どこにも木造の姿が見えない。若武者は困った顔を浮かべた。


「木造様はあいにくどちらにおられるのか分からず・・・申し訳ありません」


(父上を出迎えもしないのか。どうせ当て付けであろう。困ったお人じゃ・・・)


雪姫はボソッと呟きながら走り出した。そして門の方まで進むと見慣れた人影を見つけた。父である北畠具教だ。


(けど父上に会えて嬉しい。早速色々お話しなくちゃ・・・いやダメダメ、まわりの人がいる時は親子といえどもかっちりしないね)


「これは父上、まずはご尊顔を拝し恐悦至極でございます・・・えっ!!」


型にはまったガチガチの挨拶をした雪姫であったが、父である北畠具教の顔を見た途端凍りついた。


鋭く尖った瞳は山を駆ける狼のような怖ろしさを与えている。顔もかなり引き攣らせまさに鬼神のようであった。


(これは一体どうした訳・・・いつも父上では・・・)


オロオロして言葉が続かなかった雪姫は黙ってしまった。そんな雪姫に対し、北畠具教から声をかける。


「・・・雪ちゃんご苦労様・・・とりあえずここでしばらく休むからあとよろしく・・・しかし、いたい (痛い)」


「えっここに逗留するおつもりですか。一旦伊勢にお戻りになされたほうがよろしいのでは。それにいたいとは?」


しかし雪姫の問いに答えることもなくそそくさと北畠具教は行ってしまった。彼女はただ呆然とするしかなかった。


「あの父上・・・行ってしまわれた。これはいったいどうしたことなの?」


あの父上がどうして。この問いに答えが出なかった。いつも温和でどこかいい加減で適当な父上なのに。


「雪姫様、鳥屋尾でございます。少しよろしいでしょうか」


「あなたはどう思われましたか、あの殿の姿を見て」


振り向くと、鳥屋尾はポロポロと大粒の涙を流しながら泣いている。雪姫はそんな鳥屋尾を見るもの初めてであった。


「ちょっとあなたまでどうしたのよ」


「拙者は感激しております。ついに我が殿も決断なされたと。拙者は殿に対して不安な思いを抱いていましたが、やはり戦国大名!姫様は殿のご決意を感じられませんでしたか」


雪姫は首を捻る。


「えっ、ちょっと分からないのよ。いつもと違うのはわかったけど」


「そうでしたか、やはり年の功ですかな。では拙者の思う所を申し上げます。殿は北畠家による尾張制圧を考えておられますな」


「そんな事一言も言ってませんでしたよ。それに今川家との約定があるでしょう」


「ではどうして殿は、織田家の残党や野心溢れる美濃の斉藤義龍がいつ攻めてくるか分からない不安定な尾張に留まると言っておられるのか。今川家に尾張を引き渡すならとっとと引き上げるはずです。そうではないとなると・・・」


「父上は尾張から離れぬ・・・離れぬ以上北畠家臣は尾張に留まり、ようは制圧したことになるのね・・・でもそれならそうと言っていただけたら・・・」


「言質を取られるのを避けたのでありましょう。殿が直接言ってしまったら、色々政治的に不味い事になりましょう。そして最後にいたいと言ったのはつまり異体・・・異体同心で事に当たれという意味かと」


「なるほどね・・・けど幾らなんでもそれは拡大解釈では・・・」


その時、城外から伝令が飛び込んできた。


「今川勢がこちらまで近づきつつあります。今川勢の岡部元信殿から、清洲城に入城してよいか可否を尋ねる使者が参っておられますが、いかがいたしましょう」


「こちらから指示があるまで入城は差し許すな。拙者が岡部殿と話し合いをいたす。では、雪姫これにて御免!!」


鳥屋尾はそう言うととっととその場から飛び出していった。


「あっ、鳥屋尾、ちょっとちょっと・・・行っちゃった。いくらなんでも飛躍しすぎなような・・・」


雪姫の心配をよそに鳥屋尾はギラギラとした決意の炎を燃やしていくのであった・・・

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