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影が薄い主人公

しばしの混乱の後、結局話し合いの場が設けられた。


北畠家の軍使が会談の場へと進む。その陣の中の空気の悪さは尋常ではないほどである。


「・・・あまり歓迎されてないですな・・・」


軍使は溜息をついた。柴田勝家を中心に右手に林秀貞ら和平派、左手に森可成ら主戦派が並んでいる。胃に穴が開くほどキリキリとした雰囲気だ。現代風に言うと


「よくぞ一人でここまでこられましたな。拙者は柴田勝家である。そなたは?」


「はっ、拙者は北畠家配下鳥屋尾満栄の家老であります。名前は作者が調べても分からなかったそうなので、自分でも分かりません」


今度は柴田勝家が溜息をついた。この作者シリアス展開が持たないなと思っている。


「相変わらずいい加減な作者だな・・・まあそれは良い。ご用向きを伺おう」


「では本題を。我等は織田信長様の妹君、犬姫様と市姫様の身柄を確保しております。ご安心くださいませ、丁重に扱っておりまする」


「なに、それはまことか!!」


周りの者達がざわめく。


「まことまこと、にわのまことでございます」


「いやだからこの作品を読んでる読者層分からないだろ・・・まあそれは喜ばしいこと。しかし用件はそれだけではあるまい」


周りの者達のざわめきが止まる。そうである、それだけの事を言うためにここまで来るはずがない。次からの発言が重要である。ようはその命と引き換えの条件である。


「わが方の条件としては、直ちに停戦をして頂きたくお願い申し上げます。そして織田家の方々は悉く助命いたします。ただし北畠家の家臣になることが必須であります」


「何を申すか!!たった今まで殺し合いをしていたのだぞ。それに信長様も討たれておる。そんな屈辱的な話があるか!!」


森可成ら主戦派が激しい叱責を浴びせる。その怒りももっともである。ただし織田家残党も一枚岩ではない。林秀貞ら和平派としてはむしろ好条件であった。


(思ったより北畠家の条件が甘いな・・・飲みたい所だがうかつに賛同すると森可成が収まらないだろう・・・)


会談の場はまさに鉄火場のように荒れているが、各々の表情には僅かな差が現れている。そのを見逃すほど北畠家の軍使は間抜けではない、名前は無いけど・・・


「お怒りごもっとも思いますが、ここは織田家のためにもご賛同を」


あくまで自分の安泰の為ではない、織田家を守るため。この線で話を推し進める。それがベストとそう軍使は判断した。


「むむむ、そう言われると・・・」


森可成はややトーンダウンした。勢いに任せて決戦を主張していたが、織田家が生き残る目が出てきた以上それを潰すのは忠臣なのであろうかと思い始めた。


「森可成殿、ここはこの林秀貞の顔を立ててこの手打ちに賛同してくだされ」


そう言った林秀貞が、すっと森可成の傍に寄り、小さい声で耳元で囁く。


(・・・とりあえず犬姫様と市姫様をお守りして、隙あれば北畠家を討てばよかろう・・・)


「!!・・・あい分かった。無念だが止むおえない・・・」


その賛同の言葉を聞いた軍使は、パッと立ち上がった。それはそれは嬉しそうな顔をしている。もし調停に失敗したら切腹ものだったからだ。


「おおご理解して頂きまことに結構。ささっ、では柴田様、早速細部について決めていきましょう」


柴田勝家は何も言わずただ黙って頷いた。もう主導権が織田や今川ではなく北畠に流れつつあるのを肌で感じながら・・・



その後取りまとめた内容は以下のとおり。


一、北畠具教は織田犬、織田市を助命すること。


二、北畠家に降伏した織田家家臣に罪を問わないこと。


三、この件に対し北畠家、織田家ともに異議を申さないこと。


四、この内容に対して北畠具教の誓詞血判を求めること。


北畠雪、鳥屋尾満栄、柴田勝家、林秀貞、森可成、連署



「ではこの内容で宜しい御座いますか。早速、清洲城にいる雪姫様と、主人公なのに影が薄くてどこにいるか分からない北畠具教様にお届けいたしまする」


そう言って軍使はさっさと馬に乗って、織田残党の陣から飛び出していった・・・



「ハッ・・・ハックショーン!!うう風邪を引いたかな」


「馬鹿は風邪を引かないと言うんですけどね」


「うるさいぞモブ!!」


ここは北畠主力部隊である。北畠具教はここにいて、部隊はゆっくりと清洲城に向かっていた。もう雪達は清洲城に着いている頃だろう。


「なおモブ。また戦いかな・・・しかしお尻が痛い」


「さてそれは分かりませぬ。先に木造具政殿が城に着いていますし、雪姫様も向かっていますから、ここはお二人に任せましょう。しかしお尻とは?」


そんな時、一人の伝令が到着して、北畠具教に報告した。


「殿!!大勝利でございます。木造具政様が清洲城に突入してこれを陥落させました。すでに雪姫様達も城内に入られ、城外の織田家残党と睨みあいをしております」


「ええ!!マジで!!チョベリグ!!」


「殿、そんなギャル言葉、死語にも程があります」


そんな馬鹿な会話をしているとまた別の伝令が飛び込んできた。


「殿!!お喜びくださいませ。雪姫様と織田家残党の間で和議が纏まりました。これにて戦いは終わりでございます。わが方の勝利です」


「おお流石は雪ちゃん、よく出来た娘だなー。これであんな怖い思いはしなくてすむ。さっそく僕達も清洲城に入城しよう」


モブが怪訝そうな表情を浮かべる。


「殿、まだ早くありませんか。清洲城内はまだ危険かと。ここは安全な蟹江城に向かった方が・・・」


「それだと着くのに時間かかるじゃん。僕は一刻も早く城に入って休みたいの!!」


「なぜそんなに慌ててるんですか?」


「おいモブ、ちょっと耳貸せ。・・・実はお尻に激痛が走ってるんだ。これかなり痔が進行してる。ボ○キ○ール塗らないと・・・」


そうなのだ、この北畠具教は痔持ちなのである。それなのに慣れない馬で激走したりして、鞍とお尻が擦れ痔が悪化しかなり痛みが来ているのだ。


「ププププ!!殿は痔持ちから大痔主にクラスチェンジしたのですな。それならしかたありませんな」


モブは大爆笑している。しかしこの痔がこの先のお話に影響を及ばすとは誰も想像していなかった・・・


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