進退ここに窮まる
私生活でゴタゴタしており更新が遅れました、すいません。
「くっ、離せ!!この下郎!!」
ここは清洲城内。一人の女が木造軍の兵士に捕らえられている。そう、いまだ騒乱の気配は収まっていなのだ。
「ふふふっ、最後の一人ようやく捕らえたぞ。散々辱めてやるからな」
木造軍の兵士達が下品な声で声う。まさにゲスの極み。よし時事ネタいれたぞ。
「くっ獣どもめ。しかし私は絶対に堕ちないぞ」
女はぺっと地面に唾を吐いた。上目遣いで睨みつけている。
「ふっ、そんな、よくある女騎士みたいな反応いつまで出来るかな・・・」
そう言った木造軍の兵士が一冊の本を取り出した。それを見た女の顔色が変わった。
「そっそれは・・・」
「そうこれはお前が書いてこの城の闇市で流通していた、やっぱ髭もじゃラブという信長攻め×勝家受けの同人誌よ」
「なぜそれがぁぁぁぁひぃぃぃぃぃぃそれだけは」
「さっそく読んでやろう。勝家のガッチリした厚い胸板に信長の指が・・・」
「やぁぁぁぁぁめぇぇぇぇぇぇぇてぇぇぇぇぇぇ」
そんなまさに凄惨な場面に、突然凛とした女の声が飛び込んでくる。そう雪姫である。
「お前達、なにをしているの!!」
「こっこれは雪姫様!!!へっへー」
その語気に押され兵士達があわてて土下座をする。後方から城内に入城した雪姫達があらわれ、こちらに向かってきた。その表情を見るに明らかに怒っている。
「この城の中の様子はなんなの!!秩序が全然取れてないじゃない!!とにかくここは私達が仕切るから、貴方達は下がりなさい!!」
「こらこら、後から来てなに勝手な事言ってる!!」
皆がその声がした方を振り向くと、そこには木造具政がのっそりと歩いてきたのである。
「この城を取ったのは我々だ。後から現れて寄こせはないだろう」
「それとこれとは話が違いますよ。この乱れっぷりは何なんですか、叔父上」
木造具政と雪姫が睨み合っている。このままでは味方どおしで戦いが起こりかねんと思った鳥屋尾満栄が、慌てて間に割ってはいる。
「御両人、しばらくしばらく!!木造具政様、ここは雪姫様の顔を立てていただけないでしょうか。もちろん手柄を取るつもりなど毛頭御座いません!!」
「・・・お主がそこまで言うなら引き下がろう。よし、お前達、ここは任せて引き上げるぞ」
そう言って木造具政は部下達を引き連れて、城から出始めた。
(ふっまあ良い。このままここにいて混乱の収拾しろと言われても面倒で実利もない。ここは雪に貸しを作った方があとあと良いだろう・・・)
すかさず、雪姫は部下達に命令を発する。
「皆の者、さっそくこの混乱を鎮めるのよ。ではかかりなさい」
こうしてようやく清洲城の混乱は収まり始めたのであった。
「もう少しだ、もう少しで清洲城だぞ!!」
兵士達に激を飛ばしながら、柴田勝家はひたすら清洲城に向かっていた。ついてきた善照寺砦の兵士は五百人ほど。途中、織田方残党兵を糾合して増えていったが、それ以上に脱走兵が多く、むしろ最初より数を減らしていた。
(くっっっやはり殿・・・信長様を失ったのが大きいか・・・しかしなんとか城に入らなくては。そうすればワンチャン・・・いやいや勝機がある)
その時、先に城の様子を見に行っていた物見の侍が慌てた様子で戻ってきた。
「かっ勝家様!!大変に御座います。清洲城が燃えております!!!」
「なっなんだとーーーー!!早い、早すぎる落ちのが。こうしてはおれん、いそぐぞ」
そしてようやく到着し、慌てふためいた勝家達の目に飛び込んできた光景は、彼方此方から火と煙が立ち込める清洲城であった・・・
呆然とする柴田勝家達の前に、着の身着のままボロボロになった清洲城守備隊が次々と逃げ込んできた。その中の一人がゼエゼエ言いながら報告をする。
「申し訳御座いません、清洲城は北畠軍の猛攻に耐え切れなく落城いたしました」
「そんな馬鹿な!!はっ、ご子息奇妙丸様はどうした、帰蝶様は!!」
その兵士はついに堪えきれなくなったのか、ボロボロと涙を流しだす。その表情は実に無念そうだ。
「帰蝶様は城と運命を共にいたしました。ご子息の行方は分かりかねます、申し訳御座いません」
「なんということだ、そんな馬鹿な・・・」
あの精鋭の織田軍が・・・今川義元すら打ち破った我らが、あのうつけと言われている北畠にこんなに呆気なくやられるとは。あの男はとんでもない器をもった武将であったか・・・
しかし気付いたときにはもう手遅れであった。もう織田方に戦う戦力はほとんど残っていないのは確かであった。たった一日でここまでやられるとは・・・
「勝家様、我等の後続より北畠軍が迫ってきております!!」
次々に伝令が現れ、深刻な報告ばかりする。柴田勝家はもう完全に手詰まりになってしまったのを悟るしかなかった・・・




