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帰蝶の最後

清洲城が木造隊によって攻められている時、この作品の主人公北畠具教等一行は、桶狭間から清洲城に向かって進軍中であった。


「先発隊より伝令!北畠具教様、清洲城に向かう途中の砦に人の気配は無いとの事です」


騎馬に乗った武者が駆け寄り簡潔に報告するとまた飛び出していった。


「織田勢残党は、各個で迎撃する気は無いようですな。恐らく清洲城に向かったものかと」


「ええそれじゃまた戦になるの?もうこんな怖い思い嫌だよ・・・」


「殿、しっかりなされませ。この大勝利は殿の手腕があってこそのもの。自信を持たれませ」


バトル物の主役とは思えない程の弱気発言している北畠具教。それを鳥屋尾満栄が励ましている。


「そんなんだから主人公が地味だの存在感が無いとか言われるんですよ」


「うるさいぞモブ!!作者知り合いから直接言われたんだぞ!!気にしてるんだから黙ってろ!!」


モブがまたしゃしゃり出てきたので、いつものように叱りつけた。


「しかし出来れば清洲城は話し合いとかで上手く収まらないかな・・・」


北畠具教がボソッと呟く。彼はもうこんな凄惨な場所に居たくないのである。しかし・・・




「攻めろ、イケーーー!!撫で斬りじゃぁぁぁ」


北畠具教の思いとは裏腹に、木造具政は刀を片手に城内に押し入っていた。今まで見た事もないような鬼気迫る勢いに吊られ、部下達も後に続く。


「なんか木造様、えらい気合だな。いつもはこんな事ないのに・・・」


部下達は困惑しながらもついて行く。城内の抵抗ももうほとんどなくなっているので、本当なら金目の物などを物色したいのだが・・・




「かなり音が近付いてきましたね・・・もう中にまで敵兵が忍び込んで・・・」


逃げる事無く、最後まで帰蝶は城の中に残っていた。しかしそれももう終わりになろうとしていた。部屋の中には誰もいない。多くの者は逃がしたし、そうでなければ言われる前に逃げていった。彼女は懐から短刀を取り出して抜く。きらりとそれは光った。


「もはやこれまで・・・先に逝かせてもらいます・・・」


帰蝶は躊躇う事無く、その短刀を喉に突き刺した。戦慄な光景が広がる。おびただしい血が噴出しながら、彼女は何も言わずに絶命していった・・・。


その時、部屋の屋根の板が外れ、一人のクノイチ・・・鷹が現れた。


「・・・間に合いませんでしたか・・・しかし見事な最期を遂げたようですね帰蝶様」


鷹はスッと下に飛び降りた。そして最後を遂げた帰蝶に手を合わせた。間に合えば助けられたかもしれない。しかしそれが正しい事なのかは分からない・・・。


この部屋は信長が使っていた。そうなれば何か重要な物は無いかと鷹は思い、物色に来たのだ。早速、彼女は部屋を調べだす。


「これは何かしら・・・部下を上手く叱る100の方法?信長様も色々苦労があったんですね」


なにやら信長の隠された一面を垣間見た感じになり、どうにも悪い気がする。そんなこんなでガサガサしているとなにやら気になる書状が出てきた。


「・・・これは木造具政殿の書面・・・何故こんな所から・・・うん!」


その時、部屋に近付く気配を鷹は感じた。彼女は慌てて書状を持って空いている部屋の屋根に飛び込み、板で閉ざした。


「ここか信長が使っていた部屋は!!」


荒々しく木造具政とその配下の者達が入ってくる。そこには帰蝶の亡骸があり、多くの者は驚いたが木造具政は気にもしていない。


「よしお前ら護衛ご苦労。俺はここでやる事があるから、お前達は残党狩りでもやるがよい」


「そんな勝手な。大体こんな所でやることって・・・あわ押さないで木造具政様!!」


「とっとと、どっかに行け!!」


部下達を追い出した後、木造具政は部屋を物色し始めた。兎にも角にも自分の内応の書状を見つけて処分しなくてならない。部下達に手伝ってもらえば早いのだが、事がばれてしまう。


「なんだこれは・・・強いリーダーになる10のヒント?やけに自己啓発系の物ばかり出てくるな。苦労してたんだな。くそ、中々見つからない」


それもその筈、肝心の書状は鷹が持っていってしまっていたからだ。しかしそんな事を知らない訳だから、ひたすら無い物を探さなければならない。そして見つかる筈がない。


「くそっどうしても見つからない。あまり時間をかけると怪しまれる・・・いっそ火をつけて部屋ごと燃やしてしまうか」


木造具政は再び部下達を呼び寄せた。みんな露骨に嫌な顔している。


「追っ払ったり呼び寄せたりめんどくさい事しないで下さいよ」


「一々反論するな。とにかくこの部屋を燃やせ、痕跡が無くなるくらい」


「そんな勝手なことしていいんですか・・・って言っても怒るんでしょ・・・とにかくこの女の遺体だけはどこかに運びますからね」


部下達はブツブツ言いながら部屋に油を撒き、火をつけた。瞬くに火が広がり部屋は火に包まれる。そして当然それは彼方此方に飛び火する訳で、城に火が広がっていく。


「ああ、まだお宝があるかも分からないのに勿体無いな・・・」


そんな部下達の嘆いている傍にスタっと鷹が飛び降り、そのまま闇の中に消えていった・・・部下達は誰もそれに気が付かなかった・・・。

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