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三者三様

織田と今川、そして北畠のぶつかる桶狭間の戦いが行われていた頃、清洲城で怪しい人影が動いていた。


「・・・そろそろいいかしら」


そう言ってその人影が建物の影から出てくる。身なりはいかにも女中のような格好の若い女である。そしてその女は何処かで見覚えがある。


「北畠具教様のご命令によるとそろそろ行動開始になるけど・・・ところで皆さん、私の事分かります?」


そう彼女の名前は鷹・・・北畠具教の寵愛を受けている女忍者である。


「覚えてますよね、鷹ですよ。えっ誰それ?ほら第3話の姫武将を登用したよ!で出てきた女忍者ですよ。あの後北畠具教様に命を助けていただきそれから従っているんです。なにの作者が私の活躍するシーン全部カットしたの!!プンプン!!」


さてそれは兎も角、この鷹は北畠具教から密命を受けていた。桶狭間の戦いが始まろうとしている時間になったら、清洲城で混乱工作を行うように命令されていた。史実を知っている北畠具教とは違い、なぜこの日この時に戦がおこり破壊行動しなくてはならないのか鷹には分からなかった。


「大殿は私のような者とは違って、きっと深い戦略があるのね・・・」


しかし作戦の意味や理由など鷹には必要なかった。ただ忍びの者として完璧な仕事をするのみである。


「ところで読者の皆さんは、この私で大丈夫だと思ってる人もいるかもしれなせんね。フフッ、カッコイイところを見せてあげますよ」


その時、鷹の後ろから男の声が聞こえる。


「おいそこの女!!そこで何をしている!!」


(いきなり見つかってしまった・・・恥ずかしい・・・とにかく誤魔化さないと・・・)


鷹は振り返った。そこには、猿顔の若い小男が立っている。服装はお世辞にも綺麗ではない。どうやら下っ端のようである。


「わっ私は只の城で働いている女中でございます。えーとえーと・・・迷ってしまって・・・てへぇぺろ」


とりあえず笑って誤魔化そうとするが、そうは簡単に事は運ばない。てかこの時代にてへぇぺろはないだろう・・・


「俺は家中の若い女の顔はすべて覚えている。お前のような上物の女などは見たこと無いぞ」


(なんか凄いこと言っているみたいだけどただのスケベな男だな・・・)


その小男は腰の刀に手をかける。このままではマズイ。闘えない事も無いが、死体が残ったりすると目立つ過ぎる。とにかくなんとかしないと。


「本当に怪しい者じゃないですよ。見逃してもらえないですか(ハート)」


そう言って鷹は、チラッと着物をずらし肩を見せた。女の柔肌が妖しく見える。


「・・・おい女、俺がそんな安い男と思わぬことだな」


(さすがにあざと過ぎたかな)


しかしその言葉とは裏腹に、その小男は刀から手を離した。顔はじつにエロそうな表情をしている。


(言ってる事とやってる事ちがうじゃん!!まあその方が手っ取り早いか・・・)


そう独り言をこぼしながら、鷹は一気にその小男との距離をつめる。その小男は隙だらけであり、全く反応できない。鷹は右足の膝を蹴り上げ、小男のみぞおちに喰らわす。


「おお美しいおみ足・・・ぐぅぅぅぅぅ」


小男はその場に崩れ落ち失神した。鷹は気絶した小男を塀にもたれかけた。


「これでサボって寝てると思うでしょ。女にやられたなんて恥ずかしくて言えないでしょうし。さて・・・」


鷹は任務を遂行するために行動を開始した・・・





「なにーーーー殿が・・・信長様が討ち死にしただと!!」


善照寺砦に柴田勝家の叫び声がこだまする。無理も無い、つい先ほど義元の首を取ったという朗報を聞いたばかりだったからだ。


「はい、信長様は見事義元の首を取るも、直後に北畠勢の攻撃を受けお味方は壊滅。神仏我等に味方せず、殿は討ち死にしました・・・」


柴田勝家はギリギリと歯軋りをする。無念この上ない。決戦には参加出来ず、あげくに主君まで討たれるとは、恥晒しもいいところである。


「なにをグズグズしておる、砦の兵をまとめて北畠勢に仕掛けるぞ!!」


「またれよ勝家!!」


柴田勝家より年上で細身の男・・・林秀貞がそれを押し留める。


「今から北畠勢に野戦を仕掛けてなんとなすか。この善照寺砦にいるのは五百もいまい。戦巧者のお主ならどうなるか分かるであろう!」


そう正面から戦えばどうなるかなど勝家にも分かりきっている。ここの兵力で北畠勢とともに今川残党とも戦うことになれば、兵力差は十倍に近い。おまけにこちらは総大将がやられ士気が落ちている。


「ここは砦から脱出して、清洲城に向かうべきである。城にいる奇妙丸様を推し立てて織田勢を結集することが肝要である」


「ぐぬぬ・・・やむおえん。その案に乗ろう。よし者ども、急ぎ清洲城に戻るぞ!!」


善照寺砦の兵は大急ぎで出立の準備に取り掛かかった・・・





「なにーーーー殿が・・・義元様が討ち死にしただと!!」


鳴海城に岡部元信の叫び声がこだまする。岡部は義元の命により鳴海城を守っていた。兵力はおよそ七百ほど。


岡部元信・・・今川家、のちに武田家に仕えた武将。忠臣であり武勇にも優れている。


「はい、義元様は信長の襲撃を受け、神仏我等に味方せず、殿は討ち死になされました・・・」


岡部元信はギリギリと歯軋りをする。無念この上ない。その時、城兵の一人が報告に来る。


「北畠家家老鳥屋尾満栄様の使いの者が見えておりますがいかがいたしますか」


「鳥屋尾満栄殿の使いがここに?うむ、すぐにお通ししろ」


早速、北畠家の使いが眼下に現れた。その表情は明るく活力があった。


「われら北畠勢は義元殿の仇、信長の本陣を急襲しこれを撃破。信長の首を取りました!!」


「なんとそれはまことか!!」


岡部元信は使いの者に駆け寄っていく。


「ははっ、首を取りましたは松井宗信殿にござまする。ただその後戦場にて絶命いたしました・・・」


「そうか、松井宗信殿・・・お見事・・・お見事にございます・・・」


岡部元信の瞳から涙が零れ落ちる。


(松井宗信殿は見事に仇をとったのだ・・・今川家家臣の誉れでござる)


「我等北畠勢はこれより織田家本拠地、清洲城に攻めまする。鳥屋尾満栄からは、今川勢は取り急ぎ駿河に戻られたしとのこと」


「うん?それはまたれよ。我等の行動は我等今川家家臣が決め申す。同盟軍とはいえ、北畠家に言われ決めることではあるまい。・・・われらも清洲城を攻め申す!!」


岡部元信は立ち上がり、すぐさま城兵の取りまとめに動き出す。


(このまま北畠家中心に決められたら、今川家は尾張での権益を主張出来なくなる。それではわれらは物笑いのタネになってしまう。亡き義元様に申し訳たたん!!)


今川と北畠。両家のバランスが徐々に崩れようとしているのを岡部元信はヒシヒシと感じ始めていた・・・





「なにーーーー殿が・・・義元様が討ち死にしただと!!」


大高城に松平元康の叫び声がこだまする。松平元康以下三河勢は義元の命により大高城を守っていた。兵力はおよそ二千五百から三千ほど。


松平元康・・・まあ説明不要ですね。


「はい、義元様は信長の襲撃を受け、神仏我等に味方せず、殿は討ち死になされました・・・」


松平元康はギリギリと歯軋りをする。無念この上ない。その時、城兵の一人が報告に来る。


「このシーン三回目で御座います。さすがに読者に対して失礼かと・・・」


「そんな事は作者に言いなさい!!!はあはあぜいぜい・・・それはともかくこれは好機かもな・・・」


松平元康は必死に頭を回転させていた。今まで、今川と織田・・・両勢力の狭間で酷い目にあってきた。本当に酷い目にあったのだ。くどいけど本当に酷かった。それが一気に両当主が死んだのだ。


(これは我等が独立する好機・・・今こそ行動する好機。うん好機好機言い過ぎだな。最近のパチンコ台じゃあるまいし)


「者ども、我等はこれより岡崎城に入るぞ。あと北畠の動向をよく監視するように。では行動開始!!」


織田信長と今川義元。彼らの突然の死はそれぞれの周りの者の動向を変えさせ、そして歴史はドンドン変わり始める・・・

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