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忠臣松井宗信

美杉さんは架空の人物です。

「信長様!!北畠軍の総攻撃です!!」


信長の元に伝令の侍が慌てふためきながら飛び込んできた。


「なんとしても食い止めろ、今が踏ん張りどころだ!!」


ついに来たかと信長は思った。ここを凌げば何とかなるはずだ。正念場がやってきたのだ。信長は馬に乗りながら抜刀した。


「信長様が刀を抜かれた。かなり危険だと思っているんだ」


家臣達が口々にこう言う。そもそも総大将が馬に乗っている時点でかなり危険な状況であるが、刀まで抜くとなるともう目の前にまで敵が来ていると判断しているからだ。


「北畠具教・・・まさか今川義元以上の武将とは思わなかったぞ。俺が決着をつけてやる!!」




そんな最中、今川家の家臣、松井宗信の陣は混乱していた。総大将である義元が討たれ、指揮を執る者がおらず各武将がそれぞれ勝手に動いているからだ。


逃げ出す者も続出するなか、この松井宗信の部隊は戦場に残り織田相手に奮戦していた。しかし軍を良くまとめている松井宗信であったが、義元死すとの報は瞬く間に伝わっており、末端の兵は逃げる者も出始めていた。


「松井宗信様、戦況は利にあらず。ここはお立ち退きを・・・」


「黙れ、義元様の仇を取れるおめおめと帰れるか!!なんとしても信長を討つのだ!!」


「しかし、このままでは・・・」


松井宗信は弱気になる部下を叱り飛ばしたが、彼にもどうにもならぬ事はうすうす感づいていた。


(あの精鋭ぞろいであった今川家が、こんなにもろくも崩れるとは・・・)


気がつけばまだ抵抗を続けているのは、この松井宗信の隊だけになっていた。その松井宗信隊でも兵の離反は食い止められなくなってきた。


(このままではジリ貧だ。玉砕覚悟で突っ込むか。しかし私はこの残っている家臣達の命を預かっているのだ。軽軽に決められぬ・・・)


「松井宗信様、北畠の使いの者が着ておりまする」


そんな時であった、北畠の使いの来たのは。松井宗信は直ちにこちらに通すように指示する。同盟軍である北畠がなぜこんな所にくるのか疑念はあったが、この状況では真偽を確かめる時間はない。


「今川家重臣の方とお見受けいたす。拙者、北畠家家老鳥屋尾満栄の配下、美杉勘介と申します」


「今川家家臣、松井宗信じゃ。戦場にて用件は端的に承ろう」


美杉は顔を上げた。その顔は覚悟を決めた者にしか出せないと松井宗信は思った。この者の話は聞く価値があると瞬時に察した。


「我が大将、北畠具教様は今こそ信長を打つ好機と覚悟を決め、自ら総攻撃を開始しました。今川勢もこれに加担して頂きたい」


「なんと北畠具教殿は自ら打って出たと申すか。しっ信じられぬ・・・」


この戦いはそもそも今川家の尾張侵攻が主であり、北畠はあくまでその補助に過ぎないはずである。事前の取りまとめでは、織田家滅亡の後は今川家が尾張を支配する手筈になっているのだ。


つまり北畠が全力で戦う事は無いはずなのだ。しかし現実には、北畠勢は全力を持って戦っている事になる。


「重ねて物申す。義元様は討たれたことは明白な事実と思われる。今こそ立たなければ子々孫々まで今川の家臣は臆病者と言われまするぞ!!」


「控えよ美杉と申す者!!そもそもこの戦いにおいて北畠にあれこれ指示される言われはないわ!!」


周りの家臣達が口々に口を切る。これではまるで我々は北畠の家臣のようではないかと紛議した。


「者ども、静まれ!!」


松井宗信はこう言って周りの者を制した。


「あい分かった。この松井宗信もその戦いに加わりましょう」


「まっ松井宗信様!!」


「者ども良く聞けい!!今こそ義元様の恩顧に応えるときぞ!!腹をくくれ!!」


一瞬の静寂の後、迸る感情が爆発したように歓声がこだまする。


「よーし、者ども突撃だ!!」


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