行きたくないのにどうしてこうなるの!!
「うぉー、いけいけ!!北畠具教の首はこの森可成がもらった!!」
北畠具教の後方から、突然雄叫びのような怒声がこだまする。
「うおっ、なんだなんだ」
「殿、敵で御座います、織田勢です!!」
「なっなんだって!!」
慌てふためいた北畠具教が後ろを振り向くと、織田の侍らしき軍団がこちらに迫りつつあった。それもみんな血相を変えた顔をしている。これはまずい、まずいぞ!!
「おい、モブ!!これは一体どういうことだ!!」
「ああ、見事に奇襲食らったみたいですな。さすが織田信長と言ったところですね」
「悠長な事言うな!!どうするんだよ!!」
「どうするったって・・・リセットボタン押します?」
「ふ、ざ、け、る、な!!」
相変わらずふざけた会話をしている内に、ドンドンと森可成率いる軍勢が押し寄せてくる。このままではやられてしまう。モブが困った顔して言う。
「・・・さて冗談はこれくらいにして、どうしますか殿。とりあえず逃げますか」
「むむむ、格好悪いけど仕方が無いか。よし、逃げよう!!」
俺がそう後ろ向きな決断を下した時、俺の弟の北畠具親が颯爽とあらわれ、森可成率いる軍勢に向かっていく。
「者ども!!ここで殿が退いたらわが軍の士気は下がり、そして雪姫の軍は挟み撃ちになり壊滅し、この戦は負けじゃ!!下がるな!!」
騎乗した弟の北畠具親は、懸命に激を飛ばし本隊の壊滅を食い止めようとしている。ついこの前まで僧侶とは思えないほどの獅子奮迅の姿である。
「おお、兄とは違い立派ですな」
「いちいちうるさいぞモブ。しかしこれで逃げる訳にはいかなくなったな・・・」
「これで逃げたらクズですからね。では、潔くこうしましょうか」
モブが刀を鞘から出す。
「ついにモブも戦うのか」
「いえ、いよいよもう駄目かと殿が諦めて切腹するなら、介錯しようと思いまして」
「俺はまだゲームオーバーになりたくねー!!!」
そんな時、一本の矢が風雨の中を突き破りながら二人に襲い掛かる。
「甘いは!!この程度!!」
モブは抜いた刀でその矢を跳ね飛ばす。なんだかんだ言ってこいつも武人なんだな・・・
「どうですこの私の剣捌きは」
「・・・おい!!」
「どうしましたか殿、そんな怒った声出して・・・あっ!!」
モブが振り向くと、跳ね飛ばした矢が北畠具教が乗っている馬のお尻に突き刺さっていた。
「・・・」
「・・・」
一瞬の沈黙は、けたたましい馬の雄叫びで破られた。
ヒィヒィーーン
「ギョエーーー!!誰かお助けを!!」
矢が刺さった激痛からか、馬は大きく飛び上がった。まるでゲート前で暴れているゴールド○ップのようだ。そして北畠具教が乗っている馬は完全に制御が出来なくなり、突然走り始める。
「殿、どこに行くつもりですかそっちは戦場のど真ん中ですよ」
「そんな事言ったって言う事を聞かない、ヒィェェェ!!」
そんな北畠具教を見た家臣達は大きな歓声を上げる。
「おお!!殿が敵陣に突っ込んだぞ。俺たちも続け!!」
森可成の奇襲からとにかく逃れる筈が、どんどんとより危険な場所に飛び込んでいくのであった・・・




