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死闘の果てに・・・

戦いも佳境になりつつあります。

「いけいけ――ッ!――ッ!奥へ!!例え命尽きようとも奥へ進め……!!」


美しき姫である雪姫の猛烈な檄が飛ぶ。その激に応えようと、北畠勢は怒涛に攻め込んでいた。


それを迎え撃つ織田勢は食い止めようとするが、次第に形勢が不利になりつつあった。今川勢との戦いの後、休み無く北畠勢と戦っているのだ。さすがに最初の威勢が失われつつあり、疲労の色が出始めてくる。


そこに信長本隊が援軍として駆けつけた。


「皆の者、具教の首を取れば我らの大勝利なるぞ!!ここが踏ん張りどころよ!!」


信長到着により、疲労が見えていた織田勢は再び勢いを取り戻した。ようやく雪姫の軍に対し、組織的な抵抗を繰り広げ始めた。


「くぅっっ、急に抵抗が激しくなった。うん、もしかしてあの旗は信長本隊か!!」


襲い掛かる織田の侍の攻撃を、自身の槍を使った鋭い突きと鉄壁の守りでなぎ払う。そして発見した信長本隊への突入を試みようとするが、抵抗が激しく隙がない。雪姫の純白の鎧は返り血で赤く染まる。まさに鬼神のごとくのようであった。


「雪姫め、可愛い顔してなかなかやりおる。俺も負けてられないな」


服部友貞も手勢を良く纏めていた。北畠勢は寄せ集めの部分があったが、雪姫のカリスマによって団結し織田信長に迫ろうと、必死の戦いを繰り広げる。



雨風はますます強くなる。両軍とも泥を被りながら生き残るために必死に戦っていた。そんな中、織田家家臣、森可成は焦っていた。


「思ったより北畠の動きがいい。このままでは・・・よーし」


森可成は信長のもとに進み、進言を試みた。このまま戦っていては味方が大きく疲弊してしまう。そうなれば勝ったとしても、美濃の斉藤家が攻め込んでくるに違いない。いや、そもそもこの戦いで北畠に負けてしまう。


「殿、手勢を率いて回り込み北畠具教を必ず討ち取ってまいります。ご許可を!!」


この死闘の最中、一旦とはいえ兵を引き抜くことに信長は躊躇した。それにたとえ成功したとしても、森可成の命は無くなる可能性が高い。しかし森可成の気迫に信長は押された。


「・・・良かろう、北畠具教の首を取ってまいれ。あと、必ず生きて帰るのだぞ」


「ありがたきお言葉、恐悦至極に御座います。では、御免!!」


森可成はくるっと信長に背を向けて、走り始めた。その姿を信長はジッと見つめていた。


「殿、おそらく私は生きて帰れますまい。涅槃で先に待っています・・・」


森可成一隊は戦闘場所は上手く潜り抜け、北畠具教本隊に向かい始めた。このあたりの地形などは手に取るように分かる。あとは北畠具教を討つのみであった・・・



さてそんな事など、知るよしも無く北畠具教は戦闘から少し離れた安全な場所で、形勢を窺っていた。傍にはモブと弟の北畠具親、あとは少数の護衛だけである。


「一体どうなったかな。雪姫大丈夫かな?」


「ご心配なさいますな。殿よりずっと優秀ですから必ず勝ちますよ」


「おお、そうだな。・・・ってかなんでいつも俺を馬鹿にするかな、このモブは」


北畠具教とモブがまた言い合いを始めていた。その姿を弟の北畠具親がじっと見つめている。


(これだけ見ていると、たしかに世間の言うとおりのうつけ者に見える。しかし、この度の戦略を纏め実際ここまで来ている。はたしてどちらの姿が本当なのか・・・)


雪姫達が死闘を繰り広げている中、どうにも落ち着きのない北畠具教本隊。そしてその本隊を森可成一隊がようやく捕捉した。風雨でまともに視界が効かない中、本隊を発見出来たのも森可成の能力の高さと土地勘がなせる技であった。


「皆の者、音を立てず進むのだ。俺の合図と共に一斉に襲い掛かるのだ」


森可成一隊がじわりじわりと近づいていく。そしてそれを北畠具教本隊の侍達が気がつかないでいた。なにせ、使えそうな主力をすべて雪姫に預けていると言って過言ではない。護衛も少なく、警戒に綻びがあった。


限界まで接近し、ついに戦端が開かれる。それはこの戦いの終わりの始まりを告げようとしていた。


「・・・今だ!!者どもかかれ!!」


森可成の掛け声と共に一斉に織田の侍達が、北畠具教に襲い掛かる。新・桶狭間の戦いは佳境を迎えようとしていた・・・


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