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稲葉山城の戦い11

「龍興様、ここまで来たらひとまずは安心でございます」


「うむそうだな……馬も全力疾走では潰れてしまうしな。ここ辺りで緩めるとするか」


ここは美濃から越前に向かう街道。能郷白山の麓である。もうまもなく越前に入ろうかという所であった。


北畠雪との合戦では、稲葉山城は竹中重治に取られ直接対決ではボコボコにやられ逃げ出す羽目になり完全敗北に近いのだが、まだ勝算が残っていた。


「ぐぬぬ北畠雪めこのままでは済まさぬぞ。だが生きておれば逆襲できる」


「そうですとも龍興様。取り合えず越前の朝倉様の元に行き窮状を説明すれば、手を貸して下さるはず」


史実でも斎藤龍興は、朝倉義景の庇護のもと織田信長に対抗していくのだが、この世界線の龍興も相手こそ北畠に変わったが、やはり同じような行動を取ろうとしていたのだった。


そんなこんなでまもなく越前領。とりあえずの危機は去ったかと思われたのだが……


「むっ龍興様、何やら人影……」


遠くから人影が現れ、そこがこちらにドンドン向かってくる。


斎藤飛騨守にはその姿に身に思えがあった。鋭い眼光、そして特徴的な禿げ頭……


「おっお前は……杉谷善住坊……生きていたのか!」


飛騨守は動揺が隠しきれていない。最悪なタイミングで最悪な男に出会ったしまったからである。


「……裏切り者には死あるのみ……」


杉谷善住坊が手に持っていた火縄銃を構える。恐ろしいほどの殺気を感じる。


「……龍興様、バラバラに逃げましょう。火縄銃は一発しか打てませぬ。二発撃つにはどんな名手であれ時間がかかります!」


「飛騨守下手をうったな!やむえない、とにかく俺にはまだ野心がある、こんな所でまだ死ねるものか!!」


バーン!!


龍興と飛騨守が動き出した刹那、銃声が響き、二人は馬から力なく落ちたのである。


「……まっまさか弾を二つ銃身に入れて撃ったのか……それをこんな正確に当てるとは……恐ろしい男よ……」


斎藤龍興と飛騨守はそのまま息絶えた。そしてそれを見届けた杉谷善住坊は何処となく消えていくのであった……


こうして一代で美濃を制圧した斎藤道三の孫龍興の野望は潰えた。その野望の終わり方は儚くもあっけないものであったのである……






「この遺体は龍興に相違はないか」


「はい姫様、間違いありませぬ」


しばらく時間がたち、追いかけてきた北畠雪が見たものは、息絶えた龍興と飛騨守の二人の遺体だった。


「死因はわかるか?細野藤光」


「額に一発づづ弾を撃ち込まれています。恐ろしく正確でありますな……かなりの手練れの者かと。わが犬姫様もかなりの火縄銃の使い手でありますが、ここまでは出来ますまい」


「まさか、義龍殿を撃った者の仕業か?」


「断言はできますが、おそらくそうかと」


辺りはそろそろ日が落ちようとしていた。乾いた風が靡き、雪姫を包む。


「我が方に差し出せば、恩賞を貰えるのにそれをしなかったのは農民ではなくプロの仕業ですな」


「まあなんにせよ、終わった事よ……清洲城にいる父上に至急伝えなくてはならないわね。それと二人は稲葉山城で丁重に……」


「分かりました姫様。我らも稲葉山城に入り、美濃の支配権を抑えなくてはなりますまい」


美濃を支配した斎藤龍興の死は直ちに清洲城にいる北畠具教に伝えられるのであった……





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