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稲葉山城の戦い9

「皆さん!!この私について来なさい!!」


雪姫はこう叫びながら、斎藤勢の軍団に飛び込んでいった。よもやの事で混乱している斎藤軍だったが、それでもやすやすとやられる者ばかりではない。


「貴殿は雪姫殿とお見受けいたす。その首頂き、我が殿に献上させてもらう!!」


頼もしい様相の騎馬武者の一人が、雪姫に向かって斬りかかる。


「死ねーーーー!!」


キンキンキンキンキンキン!


なにか効果音がどこかのラノベのようであるが、まあそれはそれとして激しく両名が斬りあう。一進一退である。


「女子とは思えぬ太刀筋。流石であるな!!」


キンキンキンキンキンキン!


うーんいまいち効果音は迫力ないが、一瞬の隙を雪姫は見逃さない。


「そこ!!」


雪姫の太刀が騎馬武者を斬りつける。斬りつけられた騎馬武者が血を流しながら、馬から滑り落ちる。


「むっ無念……だがあの世への良い土産話になろう……」


返り血を浴びた雪姫が、黙ってその姿を見ていた。槍を持った細野藤光が叫ぶ。


「一番槍は雪姫様だ!!皆の者、よーく覚えておけ!!そして二番槍はこの俺だ」


細野藤光の槍捌きは卓越していた。次々と狼狽する斎藤軍を打ち破る。


こうなると、雪姫についた美濃勢も腹を決めなくてはならない。続々と先頭で戦う雪姫達に合流を果たす。


「坪内利定見参!!死にたい奴はかかってこい!!」


当初の千五百から膨れ上がった雪姫の軍勢は、猛烈な勢いで斎藤軍の中心部へと進もうとしていた。斎藤軍の先兵はなんとか持ちこたえようとするも、雪姫の軍勢の勢いに押されつつあった。



さて攻められている斎藤軍。斎藤龍興の狼狽は収まらず、事態は悪化の一途をたどっている。


「わが軍の第一陣は突破されました。第二陣も不利。火急に増援を!!」


「北方城から来た安藤の軍勢の勢いが止まりせん!!このままでは挟撃されます!!」


斎藤龍興の元に来る早馬は自軍の不利を報告するばかりであった。


「ええい、情けない!!このままでは負けるではないか!!」


最早策を出す余地もなく、ただいたずらに敗北への道を斎藤軍は歩もうとしている。


飛騨守が龍興に進言する。


「自軍から離脱者が出始めております。もはやこれまで。私に一案があります」


「なんだ、申してみよ」


「ここは一旦、退き越前の朝倉殿に支援を求めましょう」


越前を収める朝倉家は、大国であり強力な軍勢を持っていた。その気になれば1万五千とも二万とも動員できる力があり、周囲に睨みを利かせていた。まあすぐ撤兵したりする癖はあったのだが……


斎藤家はその朝倉家と縁戚関係にある。ここは退き越前に落ち延び、朝倉家の力で反撃しようとするものであった。


「なんだと貴様!!俺に逃げよと申すか!!」


「殿、退却ではありません。転進であります。あくまで戦の場所をかえるのであります」


どこかの大本営発表並みに屁理屈この上ないのだが、このままでは敗北必死。飛騨守にしてみれば、自分など真っ先に斬首されるは必定。彼はまだ死にたくないのである。


「むむむむ……こうなったら仕方がない……飛騨守、越前に向かうぞ」


二人は少数の手勢を引き連れ、戦線を脱出。東海道・北国街道ルートは危険な為、越前美濃街道を目指すことになった。


主君おらぬ軍勢にもはや統率はなく、東と西から攻められ、討ち死や降伏、逃走が止まらず斎藤軍五千はこうして崩壊したのであった……



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