稲葉山城の戦い4
竹中重治達は稲葉山城の奥……所謂台所があるエリアまでその歩を進めていた。
「よし、この辺りににもつを置いてさっさと帰れ」
監視役の兵士がこう言った時、いきなり竹中重治がその兵士を羽交い絞めする。
「貴様、気でも狂ったのか!」
竹中重治がその兵士の首を自分の腕で締め上げていく。
「落ちろ!」
遂に兵士は気絶してしまう。
「落ちたな……」
監視役の兵士を黙らせた竹中重治がこう部下達に対して指示を出した。
「よしお前達、これから手筈通りに動くぞ。目指すは稲葉山城の奪取!」
「おお、やってやるぞ!!」
竹中重治の部下達は血気盛んに雄たけびをあげるのであった。
……
…………
………………
ドカーン!!!!!!!!!!
「なんだ、何事だ!」
突然の爆音を聞き、天守にいた斎藤龍興は驚きの声をあげた。外を見ると城の一部から黒煙と炎が上がっているのが確認された。
慌てて一人の侍が部屋に飛び込んできた。
「殿、一大事にございます。城から火が出ました。兵士達は裏切り者が出たと騒いでおります!!」
「急いで火を消せ。騒ぐ兵士は切り捨てても構わぬ、兎に角黙らせろ」
「御意」
斎藤龍興の部下達は急いで事態を収拾させようと動き出したが竹中重治らの方が、動きが早かった……
「火の回りが早いぞ。ここはもうダメだ!!」
「裏切り者がいるぞ。西美濃三人衆が裏切った!!」
「北畠家が攻めてくるぞ、今にも攻めてくるぞ!!」
竹中重治の部下達はこう口々に叫びながら、城の中を走り回っている。この効果はてきめんであった。
まず主力である龍興の兵士は、飛騨守について北方城攻めに回っている為、城の中の兵士は大方二線級であった事。
そして斎藤家自体……道三が長井長弘や土岐頼満を殺害し勢力を伸ばし、その道三は息子の義龍に攻められ殺され、そして龍興が義龍を正徳寺で暗殺し、家中の粛清をした事がトドメであった。
斎藤家家臣達は、明日は我が身かもしれず疑心暗鬼に陥っていた。こうなると、ちょっとした事で猜疑心が爆発してしまう。
稲葉山城から火が出て、本当か否か分からない情報が飛び交うと、もう止めるすべがなかった。
斎藤龍興の直臣達が事態を必死に収集しようとするが、もう手の施しようがなかったのである。
「一体何をしておる。早くなんとかせぬか!!」
再び報告に来た家臣に、斎藤龍興は怒鳴りつけている。
「それがままならず。枝葉の兵士達は完全に恐慌状態にあります。もはや言う事を聞きませぬ」
そして決定的な報告がここにもたらされてしまう。
「殿、大変にございます。物見からの報告によると北畠雪と思われる、軍勢が城に迫りつつあり。半刻もせぬうちに攻め寄せてくると!!」
「なに!!そんな馬鹿な!!」
「この知らせを聞いて、脱走兵も出始めております!!」
稲葉山城は風雲急を告げていた……




