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稲葉山城の戦い3

ここは斎藤龍興居城の稲葉山城近くの古民家。うっそうと草が生えていて、まるで人がいるとは思えない。しかし竹中ら一党はここでじっと決起のタイミングを伺っていた。


そして遂に待望の知らせが彼らの元にもたらされた。竹中重治は彼に付き添ってきた家臣達に意を決した声で語りかける。


「山は動いた。細田殿からの知らせによると雪姫殿は犬山城から出陣。こちらに向かいつつあると」


「いよいよですな」


家臣達の顔が赤くなっている。無理もない事である。北畠家攻略作戦の失敗の責任を押し付けられてから、家中では冷や飯食い続きだったからである。


斎藤家の家臣団からは、ごく潰しだのアル中だの散々言われたたが、それももう終わる。それも斎藤家ごと……


「ではいくぞ。これが我々の湊川だ。では成功を祈り、清めの酒を……」


竹中重治と家臣達が酒杯を持つ。だがなにか家臣達は心配げだ。


「……殿分かってますよね、飲み過ぎないでくださいね」


「無論よ。まあ安心せい」


「まあ殿も分かってますよね」


……


…………


………………


さてさて稲葉山城の正門前では、竹中重治と門番が言い争いをしていた。後ろに控える家臣達は大八車に大量の酒樽を積んでいる。


門番が怒鳴り声で竹中重治に言い寄る


「貴殿は登城停止中の身。何用か!!」


ベロベロに酔っぱらった竹中重治が絡むかのように門番に詰め寄る。


「だ・か・ら、良い酒が手に入ったからお裾分けに来たのじゃ」


「ならん!!」


竹中重治は手を振るわせながら、自分の懐を探る。すると透明の小瓶を持ち、それを門番に見せた。


「見てみろこの透明さ。これぞ丹精こめた我が自信作。振ってみると……」


竹中重治が小瓶を振る。透明の泡が現れるがすぐ消える。


「みよ、アルコール濃度が高いのですぐ泡が消える。味もな……」


ぐびっとそれを飲み干す。


「ふーまさに採れたてのスッキリとした味わい。豊かな味は50年に一度の出来栄え」


「まるでボジョレーヌーヴォーのコメントみたいだな」


「そしてみてみろ、酒は百薬の長。俺の手の震えもピタリと止まった!!」


「ただのアル中じゃないか!!」


そんなこんなの不毛なやり取りをずっと続けていた門番達もいい加減嫌になってきた。めんどくさい事この上ない。まるでそんな雰囲気を察したのか、一人の家臣がそっと門番に近づく。


「もうずっとあんな感じで我々も面倒なんですよ。酒を置いたら満足すると思うんで、どうかこれで……」


門番の懐にすっと永楽銭の束を押し込む。これがとどめだった。


「……城の前で酔っ払いが騒いでいるとこっちも迷惑だ。とっとと置いて立ち去るがよい」


家臣達は皆喜んだ。


「有難き幸せ。城の台所は場所は分かってます。おいてすぐ帰りますので」


「一応、監視をつけるぞ」


「まあ我らも斎藤家家臣といえども信用ならぬという訳ですな……」


門が少し開き、竹中達は大荷物を運びながら中に入っていっていく。家臣の一人が監視に気付かれぬようにそっと竹中重治に話しかけた。


「……殿、迫真の演技でしたな。まるで本当に酔っぱらっているみたいで……殿、聞いてますか?」


「うーい、こんな城すぐかっぱらってやるわい」


「ちょっと本当に酔っているんですか。そんな大きな声出さないでくださいよ」


演技が本当に酔っぱらっているのか分からない竹中重治を先頭に、一行はドンドン奥へと進んでいくのであった……




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