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酒の席

細野藤光との謀議から少したったある日の事、安藤守就はある男の屋敷を訪れていた。


その男の名は、竹中重治。史実では天才軍師ともいわれ、なろうの他の作品でも超活躍している有名人である。この作品でも先代義龍からの信頼も厚く、北畠家への侵攻に際しては、作戦参謀のポジションついていた程の人物である。


……が作戦失敗の責任を問われ、失脚。落ち込んでいた時に親愛なる義龍が殺され、すっかり酒飲みに浸っていると評判である。


「……この前、ここに来た時は酒乱のあいつに絡まれえらく難儀したわい」


失脚した最初の頃は、反乱を恐れて龍興から屋敷に監視の者が張り付いていたが、酒乱が酷く最早その心配なしとされ、かなり監視は緩んでいる。


安藤守就もかなり警戒して来たのだが、屋敷の周りの監視の者もやる気がなく、「義理の息子に会いに来た」(竹中重治の嫁は安藤守就の娘)と情に訴え、金を掴ませたら難なく入り込めた。


(道三様や義龍様がこれを見たら叩き斬るであろうな……)


家中の緩みとは無縁だった斎藤家だが、龍興の代になり急速にこれらが悪化していた。


(最早、斎藤家はこれまでであろう……)


安藤守就がそんな事を考えながら、竹中重治の部屋に向かっている。通路には、飲み干した酒の残骸が散らばっていた。


(しかし汚いな。家中の者は掃除すらしていないのか。しかしなんでストゼロとか落ちてるんだ。悪酔いするぞ)


時代背景を無視しているがまあそれは兎も角、そんなこんなで部屋の前についた安藤守就であるが、そこが一番酒臭かった。


「しかし酷い匂いじゃ。息を吸うだけで酔いそうだ」


一瞬開けるのを躊躇したのだが、ここまで来て帰る訳にも行かず、意を決した安藤守就は思いっきり襖を開けた。


「おい、重治。起きているのか!」


そこで安藤守就が見たのは、想像とは違いきちんとした姿で書をしたためている竹中重治であった。


「なんですか継父上、お騒がしい」


「これは一体どうした訳だ」


安藤守就が竹中重治の前にドカッと座る。


「どうしたもこうしたもありません。そろそろ継父が来ると思い色々作戦を立てていた所存」


「てっきり酒色に溺れていると思っていたぞ」


「ふふっ、そう思わせていたんですよ。私がもう酒でダメになったとね」


「ほほお、流石は重治じゃの」


つまりは周りを油断させる為にあえて飲んでいた訳である。


「さて継父上。私に斎藤家を裏切れとでも」


「俺はまだ何も言ってないぞ」


「これは失礼。つい話を先回りしてしまいました」


「……もう全てお見通しだな。では聞くがもしそうであったら貴殿はいかがいたす所存か」


「……私が忠誠を尽くすは義龍様でございます。手をかけた者には復讐あるのみでございます」


暫く沈黙の後、安藤守就が切り出した。


「つまりは北畠家には恨みがなくそして斎藤家には未練がないと申すのだな。良かろう、俺と組んで義龍様の仇を取ろうぞ」


「御意に……では早速にございますが、既に策は完成しております。後は時期をみて決行あるのみ」


「相変わらず動きが恐ろしく早いな。流石義龍様の懐刀よ」


「継父上には、それまで家中の引き抜き工作をよろしくお願いいたします。クゥゥゥッッッ!!」


突然、竹中重治の腕が震えだした。


「まさかお前、病を患っておるのか!!」


史実の竹中重治は病弱であった。三木合戦の最中に志半ばで陣中で病で亡くなるのだが、まだ若い36歳であった。まあこの時は平均寿命が短いのでなんとも言えない所もあるのですが……


「……心配なさるな……薬を飲めばすぐ落ち着きまする」


「うん、その匂いは……酒ではないか!!」


「ふー生き返りました」


「アル中ではないか!!」


「アル中とは失敬な。これぐらいなんともござらん」


そう言って、グミグミと酒を飲みだす竹中重治であったが、まあ酒量が増えたとはいえ、切れ者であることには間違いない。竹中重治を味方に引き入れた事で、安藤守就の動きはより活発にそして具現化していくのであった。


しかしその酒量の多さが身体を蝕んでいくのである……



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― 新着の感想 ―
[良い点]  こういうギャグやメタな話をテキトーに入れ込んでいるところがこの作品の良いところだと思っています。真面目に考証して、しっかりとした話を作っていく作品とは違った形のものとしてよくできていると…
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