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接近

さてさて場面は清洲城に切り替わる。現在では北畠家の拠点となっているこの城に、幕府からお手紙が届いていた。


それを読んだ一人の男……旧織田家家臣である林秀貞がほくそ笑んだ。


「とうとう幕府から泣きが入りましたな。いかがしますか」


幕府はこの件から手を引くから勘弁してねとの内容である。こちらが態度を硬化させれば、幕府を追い詰める事が出切るのだが……


「まあ向こうも詫びてるんだし、ここはもうそんなに怒らなくていいんじゃないかな」


上座に座る北畠具教がのんびりとした口調でこう答えた。


「殿はお優しいですな。このまま不問にするのですか」


「うん、こっちから色々言うとまたややこしくなりそうだから、穏便に」



ハッハッハッハッ!!



突然林秀貞が大きな声で笑い始めた。北畠具教がビックリした顔を浮かべる。


「なっなにがおかしいの?」


「いやなに、余りにも殿らしいと思いましてな。私の前の主である信長様なら今頃怒り狂っていると思いまして」


「凄いキレやすい人みたいだったんだね。まあ僕は僕だから気にしないけど」


「いやいや、殿はそのままで宜しいですよ。それで今まで乗り切ったのですから」


北畠具教がフーと大きく息を吐いた。


「うーん、ここは自分も何か策謀とか仕掛けた方がいいのか?」


「いえいえ殿はそのままで動かずともよろしいかと。斎藤家は雪姫様、木造は鳥屋尾満栄殿に任しておけば大丈夫ございます。そもそも総大将がウロチョロするのはあまり良い事でございません」


「そんなもんかな。他のなろう小説だと色々凄い策で敵をやっつけてるぞ」


「なろう小説とは太平記か何か軍記物語でしょうか、拙者は存じませぬが。まあそれは兎も角、結局今の斎藤家の苦境は大将が策を色々やり過ぎた結果です。将という者は堂々するべきかと拙者は思います。つまりは殿はその点ご立派!!」


「えらく僕の事褒めるね。何か魂胆でもあるの?」


いきなり予想もしない事を言われた林秀貞が動揺の顔を浮かべる。


「えっえっえっ、なにそれは。せっ拙者は拙者は思った事をそそそそのまま言ったまで」


「そんなあからさまに動揺しなくても……うん、この甲高い声は……市姫だ」


どこからか市姫の明らかに怒気の籠った声が聞こえてくる。しかしそれはドンドン大きくなる。


バーンと障子が開き、鬼のような顔を浮かべる市姫が入ってきた。金髪の美しい髪と端整の取れた顔から想像もできるほどに……


「なになにどうしたの市姫ちゃん」


「ここにいたのね林秀貞!!貴方何この領収書は!!」


市姫は林秀貞に領収書を投げつけた。


「こっこれは接待の為に仕方なく……」


「この店、調べてみたら風俗店じゃないの!!どっかの議員じゃないんだからそんな接待、経費で落とすな!!」


「いえそれは殿の許可取ってますし……」


「こら、僕は知らないぞ!!勝手に巻き込むな!!うわーーー僕は無罪だ!!」


結局二人はこってり市姫に絞られた挙句、自費で払うことになりました……



緩い雰囲気の清洲城に対して、斎藤家はギスギスとしていた。西美濃三人衆ですら、権力の中核から外され、今や飛騨守の専横は止めようがない。


当然不平不満は斎藤家の中で拡大しているのだが、特に西美濃三人衆の一人である安藤守就は不満からより強硬的な手段を取るのではないかと噂されていた。


そしてそんな噂を何処から聞きつけたのか、雪姫配下の細野藤光が極秘裏に接近を試みていたのである……


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