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霧山城の戦い3

夜の霧山城を多くの兵士が取り囲んでいる。それは木造具政の手勢だ。


その囲みの中に反乱軍を率いる木造具政がいた。彼はまだじっと城を眺めている。そんな彼の傍に一人の侍が、報告の為に駆け寄った。


「報告いたします。北畠具房様はわが方で確保いたしました!!」


「よし、そのまま松坂城に連れて行け。誰にも会わすんじゃないぞ」


「はっ。それではこのまま城内の者達に投降するように説得いたします」


木造具政は黙ったまま首を振った。


「必要なのは北畠具房だけじゃ。このまま押し入って全員撫で斬りにしろ!!」


「とっ殿!!それはあまりに苛烈な所業。彼らとて北畠一門でございますぞ」


木造具政は城を見ながら語り掛けるかのように言った。


「……我が主君である北畠具教は甘い男だと思うがその方はどう思うか?」


「はっ、確かにこの戦乱の時代を生きておられる方とは思えぬほど、お優しい方だとは思いますが……」


「だからの……この俺は、奴と同じ様に甘い決断をする訳にはいかんのじゃ。同じ様な事しか出来ないなら、あのにっくき北畠具教と変わらんだからな」


その侍は驚いた顔を浮かべた。


「そっそれだけの理由ですか!!」


「うるさい!兎に角勝負をかけたのじゃ。今更後戻りなど出来ん。遠慮などいらん、女子供も構わずやれ!!」


「は、はっ。それでは直ちに攻撃を仕掛けます」


木造具政から指示を受けた侍が慌てながら法螺貝を吹く。闇夜に響くその音と共に一斉に木造具政の手勢が城内に押し寄せるのであった。


木造具政は自分の側近の一人に指示を出した。


「志摩の九鬼、それと志摩七党から残らず人質を出させよ。多少力づくでも構わん。志摩国は完全に我が方で抑えよ!!」


「はっ直ちに行動を開始します」


志摩を抑えないと、木造具政は二重戦線を抱え込む事となる。ここは絶対に失う訳にはいかない。


南伊勢の木造具政と美濃の斎藤龍興によって、尾張と北伊勢を支配する北畠具教を抑え込まなくてはこの戦いに勝機はない。志摩の支配権は生命線である。


(もう行くしかない。見とれよ北畠具教。俺をお前を倒し北畠当主になる!!みとれよぉぉぉぉぉ)


木造具政はただ意味なく高笑いをしている。溢れ出すアドレナリン。傍から見れば狂気だがその結末はどうなるであろうか……




一方、霧山城内は大混乱に陥っていた。押し寄せる木造具政の手勢に守備側はなすすべがない。北畠具房が城から脱出したとの報は既に広まっており、最早城兵に戦う意味を失っている。持ちこたえられない。


「北畠政成様!!最早これまででございます。城から脱出を!!」


「ならん!!お前達だけでも逃げよ。俺は逃げるわけにはいかんのだ!!」


猛将である北畠政成にとって、落城して落ち延びるなど到底看過できないのであった。それに信頼してこの城を任せてくれた北畠具教に合わせる顔がない。


「いたぞ!!敵の大将首だ!!」


北畠政成がいる部屋に木造具政の兵士達が押し寄せてきた。激しい斬りあいになるが多数に無勢。必死に戦う北畠政成だったが、遂に彼の身体に槍が突き刺さる。


「無念じゃ……我が殿が天下取るのを見たかった……」


いつの間にか城内から火の手が上がる。それはやがて業火となり全てを焼き尽くさんという勢いになった。


霧山城の戦いはあっという間にけりが付いた。南伊勢の抵抗勢力となりうる霧山城を潰した木造具政は、南伊勢・志摩の豪族達の抑え込みに急ぐ。果たして彼の野望は成功するであろうか……



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