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霧山城の戦い2

完全完璧に包囲された霧山城。なにせ地の利がある木造具政は抜け道に完全に知っていて、とても脱出は不可能。そこに包囲軍の木造具政から降伏の使者がやってきて、城内では激論が繰り広げられていた。


「……我らの主君、木造具政様の軍門に降りられたし。北畠具房様のお命は補償いたします」


「戯言を言うな!!我ら一兵になるまで戦う!!」


「北畠政成殿に聞いておりません。北畠具房様のご意向を確認したい」


「拙者は補佐役じゃ。俺が納得できぬものを北畠具房様は認めにならん」


木造具政の使者と北畠政成の激論は平行線をたどっていた。ってか北畠具房はほとんどほったらかしだ。


「では、具体的なお話を致します。まずは我らは木造家は北畠具房様こそ北畠宗家に相応しいと考えてております。その補佐役を当家が承ります」


「どういう事だ。主君北畠具教様を裏切れというのか!!」


「北畠具教は、幕府の仲介を無視し斎藤義龍を卑怯な手段で暗殺いたしました。これに幕府は大いに怒り、北畠家討伐の命が出されることは必定。北畠家の血は残さなくてはなりません」


「お主は本気でそう思っているのか。我が殿がそんな卑劣な謀略を行うなど到底信じられん」


「既に証人も証拠もございます。このような暴挙に対し、我が木造具政が大いに嘆き悲しんでおります。もはや北畠具教は天下国家を大いに悩ます存在にて、当家の当主に非ず。ついに打倒を決意されました」


「ふっ、詭弁もいいとこだな。ようは木造具政が実権を握りたいのであろう。我らはその様な企みに手はかさん」


「では、このまま城を枕に討ち死になされますか。そうなれば北畠具房様のお命も補償いたしかねますが……」


「ムムム……」


史実でも北畠家と木造家はどうにも仲が悪い。これが結果的に伊勢北畠家の崩壊につながるのであるのだがまたこれは別の話である。


さてここで補佐役の北畠政成は考えを巡らしていた。


(このまま戦えば間違いなく北畠具房様の命はあるまい……それはわが殿北畠具教様が大変嘆き悲しむであろう)


チラッと使者の顔を見た。


(さりとてこのまま戦わず木造具政に降りれば命は助かる。だがそうなれば今度は親子で争う構図になってしまう。それはわが殿北畠具教様が大変嘆き悲しむであろう。果たしてどちらが正しいのであろうか……)


なかなか結論を決めかねる北畠政成を見た使者は、持ってきた包みを開けた。


「なんじゃそれは?」


「木造具政様からの手土産にございます。どうぞ北畠具房様へ……」


その包みの中には、弁当箱のような物が入っていた。中を開けると餡に包まれた餅のような食べ物が現れる。


「伊勢名物の餅に餡を包んだものにございます。お口にありますかどうか……」


これには北畠政成が激怒した。


「貴様、北畠具房様が食べ物につられると思うたかこの戯けが!!それに毒が入っているかもしれぬ。北畠具房様!!絶対に食べないでくださいよ」


「うん、これかなり旨い!!」


パクパク食べている北畠具房を見て、北畠政成が思わずズッコケた。


「この餡は塩味ではない。砂糖を使っているのか」


「はっ、木造具政様が苦労して探してきた逸品でございます。流石は美食家の北畠具房様。よくお分かりで」


「これは旨い。これがたくさん作られたら、名産になろう」


「有難き幸せ。どうです、我らに降伏してもらえますか」


「こんな旨いものを食べさせてもらったなら仕方ないな。皆で降伏するよ」


流石に血相を変えて、北畠政成が北畠具房に掴みかかる。


「ちょっと何考えているんですか!!食べ物に釣られちゃって!!」


「クッ苦しい。このままだとみんな死んじゃうじゃないか。父上だってわかってくれるよ」


確かにそうなのだが、このままではホイホイ食べ物に負けた間抜けな男と思われてしまう。信長のシ〇フならこんな展開でも良いかもしれないが、これではこちらの面子がない。


思いつめた北畠政成は、いきなり北畠具房の後頭部あたりに手刀をくらわした。


「北畠政成様、何をなさいます!!」


「安心せい。気絶しているだけだ」


気絶している北畠具房を寝かした北畠政成は使者を睨みつけた。


「もはやこれまで。北畠具房様を丁重に木造具政の元に届けされたし。わしはここに残り一戦を交える」


使者は驚いた顔をする。


「死ぬ気でございますか」


「自分の意志で北畠具房様が降伏したとなろうと、俺は俺の面子と意地で戦う!!」


あくまで無理やり木造具政に連れていかれたという事にしなくてはならない。もし北畠具教が戦に勝った場合、積極的に反乱軍に与したして北畠具房は廃嫡。下手すれは死罪だ。無理やりだったなら、少しでも心象は良いだろう。


北畠政成は直感的に木造具政の反乱は上手くいかないと思っていた。何故だが分からないが、そう感じるのだ。その感情に従おう。


「では、北畠政成様。次合う時は戦場にて……」


「ふっ、俺の首簡単に取れると思うな小僧」


北畠具房が場外に運び出された後、一斉攻撃が始まるのであった……


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