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手打ち3

銃撃の音が響く渡った時、寺の外で警備をしていた犬姫が真っ先にその方角に向かって走り出した。


「ちいっっっまさか、そんな所から!!」


犬姫を先頭に北畠家の警備兵が、森林の中に殺到する。


「姫様!!危のうございます。ここは我らが!!」


「私には気にするな!!兎に角狙撃犯を」


北畠家の兵士達が森林の中をくまなく探し回っているが、狙撃の痕跡さえ見つからない。


「しかし姫様。そもそもこんな所から撃つのは無理なのでは」


犬姫は首を振った。


「あなた達は聞こえなかったの。鐘が鳴る音を。ここから鐘に向かって撃って、弾を跳ね返させたのよ!!」


「そっそんな……そんな事が出切る者などこの世にはいないと思われますが……」


そんな犬姫達に寺からやってきた兵士が報告をする。


「犬姫様!!わが殿北畠具教様はご無事にございます。ただ斎藤義龍様が撃たれました。あの様子では助からないものと……」


犬姫は顔を真っ赤にしている。無理もない、兵をこれだけ固めたのにおめおめと狙撃を許したからだ。


「このままでは具教様に合わせる顔がない。徹底的に探しなさい!!」


再び捜索を開始しようとした犬姫達の元に、怒りの形相の斎藤家の兵士達が集まりだした。


「お前達が義龍様を撃ったのであろう!!」


「違います、そんな事などしていない!!」


「信じられるか!!」


斎藤家の兵士達は疑心暗鬼を生じていた。無理もない、主君義龍は撃たれ、自分達は敵地清州にいるのだ。殺気だたない方がどうかしている。


犬姫達は捜索も出来ず、斎藤家の兵士達と睨みあう形となった……





その頃、正徳寺の中は大騒ぎであった。斎藤家当主、義龍が狙撃され今まさに具教の胸の中で絶命した。境内はまさに戦一歩手前である。


「具教!!よくも義龍様を殺したな!!」


「なにを言う!!我が殿はそんな騙し討ちのような事はしない!!」


両家の主張は平行線だ。ただ分かることはこの講和はもう破滅しかない……


だが決起盛る斎藤家の兵士達とは違い、稲葉一徹ら斎藤家重臣はなんとかこの場を収めようとしていた。


(このまま切りかかった所で、ここは敵地清州じゃ。我らが全滅しては斎藤家は本当に潰れる。義龍様のご遺体と幕府の使者は無事に返さないといかん)


そんな時、一人の男……龍興の家臣、斎藤飛騨守が突然現れた。なにやら農民風の男を縄で縛っている。


「この者がすべて白状した。北畠具教に命令され暗殺者を手引きしたと。ほらこれが、こやつが持っていた証拠だ」


斎藤飛騨守が一つの書状を示した。そこには北畠具教の花押が押されている。


「これが動かぬ証拠じゃ。取り調べは我ら斎藤家がおこなう。こいつを連れていけ!!」


縛り付けた男を連れていく時、斎藤飛騨守は小声でその男に呟いた。


「……お前は兎に角なにも話すな。後で褒美を弾むからな……」


「……本当に大丈夫なんですよね……」


さて、こうなっては当然幕府の使者は激怒する。幕府の面子は丸潰れ、怒らない方がどうかしている。


「北畠殿これは一体、どういう事なのだ。我ら幕府をたぶらかしたのか!!」


「こっちも何のことかさっぱり分かりません。とにかく無実です」


北畠具教は必死に反論するが、状況が悪すぎる。斎藤義龍は撃ち殺され、手引きしたという男と書状。なにもかもが北畠具教に不利であった。


「もうよい。我らは京に引き上げる。上様にご報告しなくてはならん。もし抵抗するなら、分かっているであろうな!!護衛は斎藤家にしてもらう、よいな」


「くっ、むぐ……兎に角やっていない!!」


北畠具教はまだ言い続けるが、もうその声は幕府の使者には届くことはなかった……


斎藤家の家臣達が斎藤義龍の亡骸を運びながら、稲葉一徹が北畠具教にこう言い放った。


「では、北畠具教殿。次は戦場で会いましょう」


明確な宣戦布告。もう和平とか言ってられない。主君を殺されては、もはや斎藤家としては全面戦争をしなくてはならない。ただ、稲葉一徹は一つ不審な事があった。


(……なぜ斎藤飛騨守は、ここに居るのだ。ここには来れないはずだが……)


和平交渉はこうして終わりをつげ、北畠家はかなりピンチな状況に追いやられていた……


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