幕府の介入2
幕府に介入を求めた斎藤義龍の決断からしばらくたったある日の夜……
ここは斎藤義龍の嫡男、斎藤龍興の屋敷。ここではヒソヒソと謀議が行われていた。
「龍興様、幕府の介入に対し当家ではこれといった反対意見はございません。このまま予定通り講和は進んでいくものと思われます」
龍興の腹心、斎藤飛騨守がこう言った。斎藤家は最早講和論一色だが、この龍興達の考えは違っていた。
「こちらの計画に支障はないか?」
「はっ、龍興様、なんら問題はございません。」
斎藤龍興はフーと息を吐いた。緊張しているのか唇も乾いている。
「のう、この計画上手くいくのであろうか……」
「……龍興様、上手くいくか行かないかは、腹を決めれるかどうかでございます。ではもしこのまま講和が成立したらどうなりますか?」
「俺は家中皆からあざけ笑われるであろう。なにせ女の雪にボロボロに負け、講和に反対をしていたからな……」
初陣の戦いで雪姫にボコボコにやられた龍興は憎しみのあまり、斎藤家家中が講和論に傾いている中、強硬に主戦論を展開。これには流石に周りの家臣達も付いていかず、孤立を深めていた。
「このままいけば、道三様や孫四郎様、喜平次様のように龍興様にも害が及んでくることは必定でございます」
孫四郎・喜平次は斎藤義龍の弟。彼らも義龍に邪魔者扱いされ、殺されている。
「親父は謀略の為なら身内でも平気で殺すからな……俺もどうなるか分からん」
「もう時間はありません。この講和の席上が一番の好機。後は腹さえ決めていただければ必ずや成功するでありましょう。大丈夫、龍興様は道三様の血を引いております」
「マムシの道三の血か……やはり俺も謀略を好むのであろうな……」
一転、場面は転回しここは尾張清洲城。あちこち張りぼてが目立つ大広間の上座に、主人公北畠具教がドーンと座っている。そんな彼に鳥屋尾満栄が講和の新着状況について報告している
「……という事で、幕府が介入してまいりますが、このまま講和を進めていきます。ただ我が方には少し不利になるかもしれません」
「なんでまた?」
「当家は貧乏でして幕府にこれといった支援をしていません。対し斎藤家は猟官運動を熱心にしておりまして、相伴衆になっております」
しかしまわりにいる家臣達は冷笑を次々に浮かべていく。
「今の幕府にいかほどの力があらん。どうせ何もできず!!」
「当家も幕府に影響がある三好殿と昵懇の身。恐れることなど無し!!」
このような強気の意見が噴き出す。伊勢・尾張・志摩の三か国の領主になった北畠家はもはや一大勢力となっていた。そう簡単には引かない。
「まあ、いいんじゃない。とにかく講和しようよ。僕ももう戦はこりごりだ」
「はっ殿、五月に正徳寺にて正式に調印する日程にはいささかも遅れはありません。ご安心を」
「それなら安心。鳥屋尾満栄、よろしく頼むよ」
そんな二人に、一人の女の子が近づいてきた。北畠具教側室、犬姫だ。彼女は豊満な胸を北畠具教に押し当てながらこう言った。
「ねぇ殿。私も連れて行ってください。殿の為に親衛隊を作りましたの。それのお披露目もしたいですし。衣装も新着したいですし」
「ちょっと親衛隊って。なに勝手にそんな事してるの。衣装ってどんだけかかるの。おい鳥屋尾満栄、なんとか言ってやれ」
「いえ私も夫婦の仲の事に関しては……失礼します」
「あっ上手く逃げたな。こんな事許したら市姫ちゃんにボコられてしまう。しかしこの背中の乳の魔力は……」
結局北畠具教はこの犬姫の乳の魔力に負けて提案を受け入れてしまう。後で彼は「貴方、いくらお金使ってるのよ」と市姫にボコられるのであった……




