決断3
パソコンのファンから爆音がするので買え変えました。
SSD立ち上がりはえぇぇぇ
「殿!!良い話があります!!」
林秀貞が勢いよく話しかけた。
「お前の良い話は大体ろくでもない話じゃないか」
「いえいえ、今度ばかりはマジでいい話ですって」
「なんか大学のサークルみたいなノリだな、なんだよ話って」
「今川家が雪姫様をFAで獲得したいと。なんと年俸五万石にセットで浜松城まで付けるとの事。グゥエエエエ!!」
その話を聞いて怒った北畠具教が林秀貞の首を締め上げる。
「ふざけるな!!うちになんの得もないじゃないか!!」
「ですが労せず五万石も雪姫様はもらえるのですよ。今川家に送ったとて雪姫様なら今川氏真殿を上手く操縦できます。混乱状態の今川家を雪姫様のお力で鎮めて、三河の松平家を挟み撃ちにすれば我らとて利はあります」
「ええいなんと言おうと出さんぞ、絶対に!!」
しかしなかなか諦めないのは林秀貞の方。しつこく食い下がっていた。だがそんな彼に激烈な声がかかる。
「いい加減諦めなさい林秀貞!!父上も困っているでしょ」
「そっその声は雪姫様!!はっははー」
さっきまで大騒ぎしていた林秀貞だが、一気に収まり声の方に頭を下げた。他の家臣達も一斉に頭を下げる。
犬山城から大急ぎで駆け付けた雪姫は、甲冑を身に着けていた。無骨なのだがその白銀色の鎧姿には妖艶なる佇まいとオーラがあった。百戦錬磨の北畠家臣団も圧倒される力強さが今の雪姫にはある。そんな中北畠具教だけがほんわかと話しかけた。
「ああ雪姫ちゃんじゃないか、久しぶり。でもなんで鎧姿なの?」
「まだ領内に残党がいるかのしれませんので、移動の際はいつでも対応できるようにと、この姿をしております」
「うんうん流石雪姫ちゃんだね」
「・・・お父上は相変わらず余裕がありますね・・・それより今川家の朝比奈殿が私に泣きついてきました。今回の話を断ってくれと」
「この話、向こうが言ってきたんじゃないの??」
「それがどうも違うようで・・・今川氏真様と家臣達で意見がまとまっておりません。それに私のような者がいきなり五万石も貰ったら、向こうの家臣団も揉めるにきまってます」
まあまだ15.6の若い娘が、何十年と今川家に仕えてきた者達を一気に追い抜き五万石も貰ったら、それはもう嫉妬と怨嗟の渦になってしまうだろう。そんな朝比奈の思いを雪姫は汲み取ったのだ。
「雪姫ちゃんがそう言うならこの話は無しね。あともう縁組は雪姫ちゃんの気に入った人選んでいいからね、強制しないから」
その言葉に雪姫はかなり驚いた顔を浮かべた。なにせこの世は戦国の世。縁組などは利害関係丸出しで進むのが習いである。
「・・・ええ父上がそう言うのなら、私が良い相手を見つけるまでここにいさせてもらいます」
「うんそういう事だからみんなもそのつもりで・・・特に林秀貞は気を付けるように」
家臣一同は頭を下げるしかなかった。周りがいくら動いてもどうも当事者のこの二人は縁組などは全然興味がなさそうなのだから。
「・・・では父上、私は犬山城に戻ります」
「ええもう帰っちゃうの?」
「まだ残務整理が残っておりますから、ではこれにて。また落ち着いたら来ます」
そう言って雪姫はスタスタと部屋から出て行った。微かに甘い香りが辺りを立ち込める。
「では殿、私も斎藤家との和睦交渉に向かいます」
今度は鳥屋尾満栄がそう言って立ち上がった。その後もぞろぞろと家臣達が動き出した。
「私は松平家との交渉に」
「拙者は六角家の様子を探ってまいります」
みんなそれぞれ仕事があるので、次々に部屋から出て行った。その様子を見ていた北畠具教にモブが釘と金槌を渡す。
「はい、殿は部屋の修理が仕事です」
「・・・なんか俺だけ武将ぽくないんだが・・・」
「殿はそういうキャラなんですから仕方がないですよ」
「どんなキャラだよ!!!」
こうして北畠家は雪姫は出さない、全方位和睦に向かって走り出したのである。まあもともと平穏無事に過ごしたい北畠具教であったで、どうやら戦はこのまま終わりそうである。
だが敗れた側・・・特に雪姫にボコボコにされ、父である斎藤義龍に叱責された斎藤竜興は憤怒と憎悪の炎に包まれており、復讐と自分の復権に策を巡らすのであった・・・




