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決断2

「六角家の後藤賢豊殿が手打ちしたいと我の元にやってきましたが、いかがいたしますか」


しかしこれには他の家臣達から異論が出る。


「あいやしばらく。近年六角家は我らに対し敵対行動ばかりしておる。ここはガツンとした態度をみせるべきだ」


もともと関係が良くなかった斉藤家とは違い、六角家とは北の方を通じ縁戚関係にある。にもかからず攻めようとした行動は北畠家にとってショックであり裏切られた感が強い。


当然一部家臣達には斉藤家以上に憎悪の対象になってしかるべしなのだが、六角家は正室北の方にとっては実家である為、ここは難しい判断をしなくてはならない。戦国の世、六角家と反目すれば北の方の追放もしくはそれ以上の事をしなくてはならない可能性がある。


「殿、此度は我が実家である六角家の不始末まことに申し訳ありません。もし殿が六角家を攻め滅ぼすというならばお止めはしません。どうかわらわをお手打ちにし存分になされませ。ですが、どうか六角家にご慈悲を・・・」


北の方は旦那である北畠具教に深々と頭を下げた。妻にここまで頭を下げられては女性に優しい (甘いとも言う)北畠具教としては許さぜるえない。


「まあいいんじゃない。戦争にはなってないんだし」


流石に他の家臣達から異論の声が漏れる。


「殿そんな甘い事を言っておられるとこの戦国の世。足元をすくわれかれませんぞ」


「でもさもう戦ばっかりやるの嫌なんだよー。向こうが詫び入れてるんだしもういいじゃん!」


皆一同が思いっ切り溜息をついた。


「はあぁぁぁ・・殿がそういうのなら仕方ありませんが」


総大将である北畠具教が攻めぬと言うならば家臣達も引き下がるしかない。ただその顔が皆安堵に変わっていくのを弟である北畠具親は見逃さなかった。


(ふっ口では皆勇ましいが、心はさにあらずか・・・)


尾張の織田、志摩の九鬼、美濃の斉藤という各地の戦いで功績をあげれなかった武将達にとっては、ここで弱気な発言をすると家中で立場がなくなる。さりとてこう軍役が続いては出費ばかりでたまったもんじゃない・・・


(兄上は自ら下手に出て、家臣達の本心に沿った形か・・・なかなか出来る事ではない・・・)


弟である北畠具親はこう分析し感心をしていた。まあ北畠具教はそんな難しく考えてはないのだが、兎に角しばらく戦はこりごりだというのは、表に出す出さないの違いこそあれ共通している。


ただ次の話においては流石にこう反応するのであった。


「兄上・・・六角家はゆくゆくは雪姫を嫁にほしいと言っておりますが・・・」


「うんそれは無理。なんで雪姫ちゃんを嫁に出さないといけないんだよ。まだまだ僕の手元に置いておきたい」 (きっぱり)


「はっそう言うと思っていました。ではそれ以外の条件で話を纏めてきてよろしいですか」


「よろしくー。あと奥さんの兄 (六角義賢)も幽閉されて可哀想だから、北畠家においでと言っておいて」


その意外な言葉に驚いた北の方は喜びのあまり、北畠具教に抱き着いた。


「殿♡ありがとうございます♡♡」


「うお、奥さんいきなり抱き着かないで。びっくりするから」


着物越しとはいえ、北の方の柔らかいオッ・・・胸の感覚が北畠具教に伝わってくる。それは男心をくすぐるような甘い感覚であった。なにせ戦続きでまともに北の方といちゃついていないのだから・・・


「・・・という事で僕たちは寝室行くから後はよろしくね!」


そう言ってその場から立ち上がろうとする北畠具教の着物の袖口を、思いっ切りモブが引っ張った。


「殿、今からナニをなさるつもりで?」


「ナニって・・・ナニに決まってるよ言わせないで」


「ですからナニをしてしまうと色々と不味いですよなろう的に。それに話はまだ終わってないようですよ」


今度は無骨な風貌の森可成が主君である北畠具教に詰め寄った。


「三河の松平元康が雪姫様を正室にしたいと言っております。松平元康はなかなかの武将と思いますが・・・」


「ええい断れ断れ。断じてやらんぞ」


他の家臣達からも色々進言が出る。


「他に浅井家や十河殿からも雪姫様縁組の話がきておりまするが・・・」


「どうせ政略結婚話だろう。俺の眼が黒いうちはそんな所に雪姫ちゃんを出さないからな!!」


「殿だって信長様の妹君を側室としてるじゃないですか」


「よそはよそ、うちはうち。全部断ってこい!!雪姫ちゃんが良いという所以外は認めないからな」 (我が儘)


「結婚相手をご本人に決めさせるのですか!!それはあまりに前例のない話ですが・・・」


家臣達は動揺したが、こう頑なに殿である北畠具教が言うんのだから仕方がない。この時代恋愛結婚がなかったとは言えないが、こと大名家においては利益関係と家格が重視されるので結果的に政略結婚ばかりであった。


(これでは味方が増えぬ・・・我が北畠家だけでこの乱世を乗り切らなくてはならないのか・・・)


縁戚がある六角家は反旗を翻した。和議和睦はしてもそう簡単には元の状態には戻るまい。同盟関係にある今川家は実に頼りないなか、北畠家は単独で生き残りを図っていくのか・・・


(兄上は雪姫を手元に置く方が良いと判断されたか・・・まあ下手に味方を敵も増やしかねないからな・・・兄上もなかなかどうしてよく考えておられる・・・)


弟である北畠具親はこう分析した。松平元康と組めば今川と敵対関係になるし、十河家に行けば畿内の泥沼の権力争いに巻き込まれる。結局誰かを味方にするとそれ付属して敵も増えてしまう。それより雪姫を上手く使った方が得策だと。


まあそこまで深くは考えてはいないのだが、なんだかんだと織田家・斉藤家を退けた北畠具親の決断の実績の前には、皆逆らえず従うのであったがただ一人しつこく雪姫縁組話を持ち掛ける者がいた。


目が$マークになっている林秀貞その人である・・・


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