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雪姫大慌て

雪姫の所に間髪入れず朝比奈泰朝が飛び込んできた。その顔は悲壮感にあふれている。


朝比奈泰朝・・・今川家の忠臣である。史実ではこれから今川家は没落の一途をたどっていくのだが、最後まで今川氏真に仕え武田・徳川と死闘を繰り広げた。両者の猛攻から主君氏真を守り抜き、命を助けた訳だから物凄い出来る人だったんだなと思います。信長や秀吉の家臣だったら国一つ任せられたと。


そんな出来る男である朝比奈泰朝が血相を変えているのだ。これはなにかあったと雪姫は瞬時に察した。


「どうかしましたか、朝比奈殿。こんな所まで」


「おおこれは雪姫様。どうか今川家をお助けください」


グイグイと朝比奈泰朝が雪姫に近づいてくる。その勢いたるや思わず雪姫でさえたじろいでしまうほどだ。


「エッ何なの。一体どうしたというの」


「じっ・・・実は我が殿、今川氏真様は浜松城と五万石を与えるがゆえに雪姫様を当家に迎え入れたいと」


あまりの事で雪姫はキョトんとした。


「はぁぁぁ????」


「井伊家の当主の座を雪姫様に継がせ、井伊直虎として側近に迎えたいと」


「こう申してはなんですが正気ですかその話」


「全くもっておっしゃる通りでございます。ただ主君がやれと言えばその通りにしなくてはなりません。しかしこんな話が成立してしまえば、今川家は大混乱になってしまいます」


「当たり前でしょ、そんな当主の気分でポンポンと領地をあげては反乱がおこりますよ」


「ですので、どうかどうか雪姫様。この話を断ってくださいませ。この朝比奈泰朝一生の願いでございます」


まるですがりつくかのように朝比奈泰朝が雪姫に詰め寄ってくる。その姿を見ていると雪姫は何とも言えない気分になった。


(こんなに家臣を苦しめて・・・わが父と違って氏真殿は情けないお方ね・・・)


この作品の北畠具教も大概だと思うのだが、雪姫としては父は流石に自分についてきている者より他人に土地を与える程ではないと考えている。


しかし全く常軌を逸した話と雪姫は思った。こんな事をしている今川家とこのまま同盟関係を結んでいるのはどうなのだろうか。


(・・・一度、父上と話し合う必要がありそうね)


ともかく、雪姫としても話を受ける気持ちは毛頭ない。今、北畠家から離れるなど考えてしてないし、それよりまずは犬山城並びに尾張の平穏を取り戻さなくてはならないという使命感にあふれているのだ。


「・・・林秀貞・・・父上にこの事を報告し断るようにと・・・えっっっ」


思わず雪姫が素っ頓狂な声をあげた。林秀貞の目が$マークに変わっていたのだ!


「浜松城・・・五万石・・・」


「ちょっと秀貞、落ち着きないさい」


「姫様、こんな旨い話はありませんぞ。五万石ポンとくれるなんて。こんな儲け話りませんぞ」


「あなたってばどうしてこんな儲け話に弱いの。この前も仮想通貨運用話で痛い目にあってるでしょ。とにかく落ち着きなさいってば。父上に断るように話を・・・」


「我が殿、北畠具教様に報告しなくては・・・このビッグウェーブに乗らなくては」


「逆よ逆!!断りに!!ちょっと聞いてるの!!」


林秀貞はいきなり立ち上がり、飛び出していった。このままでは大変なことになる。朝比奈泰朝が雪姫にしがみついてきた。


「雪姫様、お願いいたしますどうか止めてくだされ」


「ええ分かっています。馬を・・・馬を用意して。私は直ぐに清州城に向かいます。河尻秀隆を臨時の城代に」


こうして雪姫は慌ただしく用意を行い、飛び出していった林秀貞の後を追いかけるのであった・・・



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