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和解と迷走

やっと続きが書けました。今後ともよろしくお願いいたします。

稲葉良通と鳥屋尾満栄らが戦後処理について話し合いをしていた頃、別の所ではまた違う動きもあった・・・


清州城下にある屋敷・・・そこには暗い顔をした中年の男・・・六角家家老の後藤賢豊が座っていた。


彼は六角勢を城に戻した後、大急ぎでここ尾張にやってきたのだ。普通なら城に入れる所であるが、当然入れてくれるわけもない。ただ後藤賢豊は北畠家とパイプを持っていた。


六角家前当主、六角義賢の妹は北畠具教の正室として嫁いでいたのだ。この強力なパイプは平時ならかなり有効ではあるのだが・・・


(・・・北の方様は来てくれるものかどうか・・・我らに落ち度があり過ぎる・・・)


そんな思案をしていた後藤賢豊の元へ、一人の美しい女と精悍な男が現れる。主人公である北畠具教の正室である北の方と、弟である北畠具親である。


「これはこれは、北の方様。お久しぶりでございます」


北畠具親がそう言う後藤賢豊をギラッと睨み付ける。


「貴殿らのおかげでどれだけ義姉上が苦しんだか分かっておるのか!!」


「その節はまことに申し訳なく・・・」


「わらわのことはもうよい。具親も落ち着きなさい」


興奮する北畠具親を北の方は冷静沈着になだめる。そして二人は後藤賢豊と対面するように座った。


「・・・さてこの一件どう釈明されるおつもりか」


「我ら六角家はけっして北畠家と一戦迎えるつもりはなく、その誤解を解くために参りました」


後藤賢豊は深々と頭を下げた。だがそんなに簡単に収まるはずもない。北畠具親が詰問する。


「後藤賢豊殿に聞く。六角勢が軍勢を動員して国境に集結したのは、我らと一戦交える為ではないか」


「いえ、我が殿が急に猪狩りをしたいと申しまして・・・」


「こんな真冬に何千人も引き連れてか!」


「ええ、そうですよ」 (真顔)


「おのれ、我らを愚弄するつもりか」


「そんなつもりはありません。事実、一兵たりとも伊勢国には入っておりませぬ」


「詭弁を申すな!!」


結局この押し問答になってしまう。必死に攻めたがる六角義治を止めさせ兵を国境から進めなかった事が、後藤賢豊にとって希望の糸である。とにかくこれで押し通すしかない。


「それに義姉上は六角家の出なのだぞ。そなたらの軽率な行為で義姉上の立場も悪くなったではないか!!」


「もうよい、具親。わらわの立場など気にせずとも良い・・・ともかくもうこちらを攻める意図はないのですね」


「はっそれはもう間違いなく。拙者、後藤賢豊の命に代えましても!!」


もう土下座のような姿勢で必死に訴えている。真冬にも関わらず彼は汗でびっしょりであった。


しばしの沈黙の後、北畠具親が北の方に語り掛けた。


「義姉上、いかがいたしますか」


「・・・私の兄上 (六角義賢)を無理矢理隠居させたとも聞いています。そしてこの挙兵騒ぎ・・・しかし散々不義理をしたとはいえ我が実家であることも事実。わらわとて心が痛い」


「ご心労おかけして申し訳ございません。何卒良しなに」


「・・・殿にはわらわからも話しておきましょう」


「ありがたき幸せ!!」


北の方も同情ばかりではない。なにせ北畠家は短期間の戦が続き、台所事情が悪化している。ここは足元を固めなければならない時期である事は分かっていた。


(・・・ここは話を纏めなくてはならないわ・・・でも殿は許してくれるかしら・・・)


北の方が思案に暮れていた時、よせば良いのに後藤賢豊が焦ったのか、口を滑らしてしまう。


「・・・ところで雪姫様のご活躍。我が近江まで聞き及んでおります」


「えらく突然話が変わりますね・・・ええあの娘はよくやってますよ」


「雪姫様には六角家の血も入っております。もし雪姫様が我が殿と義治様と・・・ぐぇぇぇ」


いきなり激高した北の方が後藤賢豊の襟元を掴み、締め上げる。


「貴方!!なにを言ってるの!!よりによって義治に私の大事な娘を出せる訳ないでしょう!!」


北の方にとって六角義治は甥にあたるのだが、仲は険悪である。自分の兄である六角義賢を独断で隠居に追い込み、自分の嫁ぎ先である北畠家に反抗したのだ。怒らない方がどうかしている。


「ぐぅぅぅお気持ちは重々・・・ですがこのままでは六角家は潰れてしまいます。雪姫様の知恵才覚をどうか我らに」


「こうなったのは貴方たちのせいじゃない!!」


六角家は畿内の雄、三好家とは敵対関係にある。それに加え北近江の浅井家と同盟関係にある朝倉家とも敵対している。手を組んだはずの斉藤家はどうにも先行きが怪しく、このままでは四面楚歌。


「義姉上!!落ち着いてください」


慌てた北畠具親が、北の方を羽交い絞めする。流石に少しは落ち着いた北の方であったが、雪姫を出すなど到底飲めない話である。


「後藤殿、帰って義治殿にお伝えあれ!!こちらからは攻めることはない・・・ですが雪姫が欲しかったらいつでもお相手すると!!」


「申し訳ござらん北の方様。ともかくどうか六角家をお見捨てなく・・・」


(流石にまだ話が早すぎたか・・・しかし雪姫様はなんとしても我らの手にしなくては・・・)


結局最後は紛糾したが、ともかく北の方はこの話を伝えに北畠具教にすぐに向かうのであった・・・


ただこの六角家の動きは、傍から見てもどうにも腰が定まらない中途半端さが否めず、この中途半端さが後藤賢豊と六角家を悪夢へと誘うのだがそれはまたの機会に・・・


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