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斉藤家の戦後処理

前回のあらすじ

雪姫は犬山城奪取を報告し、その城は与えられる。主人公はとくに何もしてません( ;∀;)

ここは美濃の国、稲葉山城。堅牢なこの城の中にある一室。そこは重くどんよりとした空気に包まれていた。例えるならノルマ未達の支店長会とかそんなの。


下座には、この度の合戦においての斉藤家の主要なメンバーが集められている。


竹中重治、日根野弘就、不破光治、そして斉藤飛騨守・・・皆、暗い表情で下を向き座っている。


対して上座に、三人のおっさん・・・稲葉良通、安藤守就、氏家直元・・・所謂西美濃三人衆がデーンとして座っている。彼らは斉藤家の重鎮達でもある。


彼らに不破光治を足して美濃四人衆、西美濃三人衆から稲葉良通を引いて日根野弘就、竹腰直光、日比野清実、長井衛安が加わると美濃六宿老となる。うん、ややこしいね。


まあそれはともかく、西美濃三人衆は大垣城にて浅井勢の警戒をしていたため戦力を温存しており、家中において最大勢力となっていた。


その彼らが、この戦の責任の総括として仕置きを申し渡そうとしていた。稲葉良通がその文言を読みだす。


「日根野弘就ら以下四名、先の戦いにおいての働き不届き至極なり!よって仕置きを申し渡す!まずは日根野弘就」


「はっ」


名前を呼ばれた日根野弘就が深々と頭を下げた。


「斉藤龍興様の補佐役でありながらその任を忘れ、いたずらに兵を損失させた責、心得難し。よって所領半減、無期限の登城停止のうえ謹慎を申し渡す!!」


その時、傍らで聞いていた不破光治が怒りをあらわにした。


「ふざけんな!日根野弘就殿は兵の損失を抑え、無事にまとめ上げたではないか。そもそも責任は・・・」


「だまらっしゃい!!不破光治、貴殿は小牧山城を奪取するも無断で和睦し兵を引き上げるなど言語道断なり。よって無期限の登城停止のうえ謹慎を申し渡す!!」


「こんなふざけた話があるか!!」


掴みかかろうとする不破光治を、残りの西美濃三人衆、安藤守就、氏家直元の両人が抑え込む。


「貴殿の怒りもっともなり。ただ我らも任務により仕置きを行っている。どうかご自重を」


「必ず復帰の機会を与える。どうかここは堪えてくれ」


西美濃三人衆としても彼らの無念を痛いほどわかる。ただこれで家中が割れてしまってはどうしょうもない。必死になってなだめている。そして日根野弘就も説得する。


「不破、ここは落ち着け。無念だが致し方がない・・・」


「貴殿にそこまで言われたら・・・」


複雑な思いがあるが承服するしかなかった。そして残る二人にも仕置きが言い渡された。


「竹中重治、無謀な作戦を立案しいたずらに兵を危険な目にあわすなど責任は重大なり。よって無期限の登城停止のうえ謹慎を申し渡す!!」


「斉藤飛騨守、戦においてその方の動きは戦意不足なり。よって無期限の登城停止のうえ謹慎を申し渡す!!」


こうして彼ら四人の仕置きが言い渡され、彼ら四人は部屋から出て行ったのだが、不破光治は怒りが収まらなかった。


(なぜ日根野殿があんな重い処罰を。そもそも飛騨守が悪いのではないか!!義龍様はなにをお考えておるのか!!)


まず嫡男龍興を処罰するわけにはいかなかった。そんな事をすれば他国に「跡継ぎは無能」と宣伝するものだし、そもそも義龍は子供が一人しかいないのだ。今更別の廃嫡するわけにもいかない。


龍興を後継レースから外せば、たちまち家中は跡継ぎを狙って政治闘争が活発になり、それは亡国の始まりとなろう。


そうなればスケープゴートとして「誰か」を責任者として処罰する必要があり、そして日根野弘就が生贄の羊の如くな処分になってしまった。四人全員を余りにも重い処分にすると、美濃の家中の勢力が衰え、北畠や浅井の侵攻を許すことになる。さりとて「誰も」処罰しなくては、責任の所在を巡り家中は揉めだすであろう。


そして飛騨守は数少ない龍興派の武将であるため、排除すれば龍興を助ける者がいなくなる恐れもある。つまりは家中の内部事情を優先し、あれこれ弄くり返した結果、日根野弘就以外は謹慎で収まったのだが、このような内輪の事情を優先する「歪な」処罰は斉藤家家中の不信感を増大させていく事になっていくのであった・・・




四人が出て行った後の部屋には西美濃三人衆が残っていた。しばらくすると当主斉藤義龍が入ってくる。


「これは義龍様、彼らには無事に仕置きを言い渡しました」


「・・・あやつらには悪いが、これも斉藤家の為じゃ・・・」


斉藤義龍は胸の痛みに顔を引きつらせていた。顔色も悪い為、白粉を塗って胡麻化している。この敗戦によってますます病状が悪化していた。


(このまま俺が死ねば斉藤家は潰れてしまう。策を練らなくては・・・)


だが頼みの竹中重治は自ら謹慎処分にしてしまったので頼るわけにもいかない。そうなると残るは彼ら・・・西美濃三人衆と話し合わなくてはならなかった。


「・・・稲葉よ・・・なにか案はあるか?」


こう聞かれた稲葉良通は意を決した発言をおこなう。


「まずは北畠家と和議を結ばなくては。そして北畠家のご息女、雪姫殿を龍興様に輿入れなされては」


この発言に安藤守就が驚きの声をあげた。


「北畠家の和議は分かるがそこまでする必要はあるのか」


「伊勢・尾張の二国の北畠家に比べ、我らは美濃一国。時がたてばたつほど国力差は開く一方でございます。紙切れ一枚ではいつ向こうが裏切り攻めてくるか分かりません、なにせ我らがそうしてのし上がってまいりました・・・」


「つまりは雪姫を人質に取るの訳か・・・だが龍興様には六角家から嫁を取る話があるのだぞ」


「いっそ北畠家と組んで六角などは飲み込んでも構わぬではないか・・・その方が我ら三人衆には都合が良い」


西美濃の拠点とする彼らにとって関ケ原付近の国境の安全保障は重大である。つまり尾張より近江を安定させた方が領地の安定化につながるのだ。六角家を飲み込めば、南近江に支配地域を広げる好機でもある。


「・・・稲葉よ・・・案としてはよいがはたして雪姫がこちらにくるであろうか・・・」


「義龍様、ここは私にお任せを必ずや雪姫を美濃に嫁がせ、和議を結んでまいります!!」


「・・・うむよかろう・・・まかしたぞ・・・」


嫡男龍興と北畠家の雪姫との縁組。確かに上手くいけば利が大きい。これで南が固まるので、今度は浅井・朝倉領に侵攻できる土台ができる。武勇優れる雪姫の加入は龍興の穴を埋めるのに十分であろう。


(・・・俺が生きているうちにこの縁組を決めなくては・・・)


義龍は胸の痛みを堪えながら、そう思いに浸っていた。そう「上手くいけば」これほど利の話はないが、問題はまったく同じことを考えている者が他家にもいたのである・・・


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