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〝プロローグ〟
「ここにきて」
誰かの声が聞こえる。
「早くきて」
その声はとても心地よく、シモンを安心させる。
白い広いなにもない、どこかの芝生の上。
君は一体誰?
聞こうとしても、声は出ない。
声の出し方を忘れてしまったような、そんな不思議な状態。
「あなたを待っているわ」
また聞こえる。
優しそうな女の人の声。
「時間はもう残り少ないの」
懐かしい声。
どこかであったことがあるだろうか。
シモンはそんなことを考えながら、空を見る。
真っ白な空。
なにもない。
ただただ白い空。
その白い空に向かって手を伸ばす。
「そろそろ起きて、私を迎えにきてねシモン」
その瞬間、シモンはパッチリと目を覚ました。