生と死の狭間で死神は笑う
ー俺の人生、あっけなかったな。
ーまさか電車に轢かれて死ぬなんて。
ー十七年で終わっちまうとはな。
ーまだあのゲームクリアしてなかったのに。
ー借りた漫画も返しそびれちまった。
ーこんなことならあいつに告っておけばよかった。
後悔ばかりが積もっていく。
ー俺、死んだのか。
『おい、お前』
ー誰なんだ、俺に話しかけるのは?
真っ暗で何も見えないが、声だけが聞こえてくる。
『鉄剣司で間違いないな?』
ーああ、そうさ。俺は鉄剣司。お前は……死神ってやつか?
『まぁ、そんなところだ』
ーで、その死神が俺に何の用だよ。俺を迎えにでも来たか。
『突然だが鉄剣司、お前はまだ死んでいない』
ー………なんだって?
『致命的なダメージは負っているが死んじゃいない。近代医学に感謝するんだな。複雑骨折、鼓膜破裂、内臓破裂、エトセトラ…ひどいもんだな、こりゃ』
ーもう死人同然じゃねーか。
そんな状態で生き返っても、希望なんて無い。
『まあ待て。そこで、だ。一つゲームをしてみないか?』
ーお前…ふざけてんのか?
『お前が異世界を救うことができたら事故の前まで時間を戻してやる』
ーやっぱり、ふざけた話だ。
ありえない、とも言おうとしたが、今のこの状態がすでに普通ではないためなんとも言えない。
『悪くない話だと思うが?』
ー………もし、その異世界とやらを救えなかったら?
『挑むと決めた勇気を称えて生き返らせてはやろう。ただし致命傷のままだがな』
ー…断ったら?
『この場で、ジ・エーンド、だ』
死神はおどけたようにケタケタと不気味な笑い声を出した。
ー面倒なことに巻き込みやがって…
『どうするんだ?やるか?やらないのか?』
ーこのまま死ぬなんて…嫌だ。やるに決まってんだろ。さっさとしやがれ!
『ふっふっふ、一命さまごあんなーい、ってな』
ーもう喋るな、耳障りだ。