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事件は突然に
帰り道、話は当然、球技大会の話になった。
「ケンちゃんは球技大会何に出る?」
「正直パスしたかったけど、一応、ドッヂボール」
「ケンくんいろんな競技に引っ張りだこだったのに、よかったの?」
「いーんだよ。俺が本気になれるのは剣道くらいだ」
「でも実技テストは?」
「本気出す」
「ほんと現金なやつだよ」
他のスポーツに剣道ほどの緊張感は求められないが、成績に関わる実技テストは別だ。
話をしながら踏切に入った直後、踏切がカンカンと鳴り始めてしまったが、急いで渡ってしまおうと三人は走りだした。
「急げ急げー」
「ほんとは駄目なのに…」
「もう遅いよ」
しかし、四つ目の線路に差し掛かったところで事件は起きた。
「あっ!」
鈴木が転んでしまった。野島は気付かなかったようで、全力ダッシュで向こう側に着いていた。
「大丈夫か?」
「ん、大丈夫。怪我はしてない」
助け起こそうと肩を担ぐ。野島は今頃気付き、「大丈夫か!?」とこちらに戻ってこようとしたので、手で制した。
「立てるか?」
「うん……あれ…?」
「どうした、急がなきゃ」
「ど、どうしよう!?靴が、靴が抜けない!」