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死んでエクスカリバー  作者: 肉付き骨
いざ、(勇)魔王城へ (剣)仲間探しへ
19/21

人喰い刀、エペタム

「なんでだよ?あんたも未練があったから死神のゲームに参加したんだろ?」



 死神のゲームに参加するからには、生き返りたいと思っていたに違いないのだ。それなのに何故、エペタムは魔王討伐への同行を拒むのだろうか。



金色(こんじき)の剣よ、貴殿は何故死んだのか思い出したのでござるか?」



「いや、まだほとんど記憶は戻ってないよ」



 何故いきなりそんなことを聞いてきたのだろう。エペタムは少しの間押し黙っていたが、何かを決心したように、ゆっくりと語り始めた。



「記憶によるとどうやら、拙者は好敵手と戦って散ったようなのでござる」



「なら尚更生き返りたいじゃないか」



「たしかに死の直後は黄泉返りを強く望んでいたのやもしれんが、記憶を取り戻して改めて考えると、案外、元いた世界への未練なんて小さなものでござる。剣の姿での生活も、慣れれば悪くないものでござる」



「ふーん、そういうもんか」



 自分だったらどんな死因でも生き返りたいと思ったが、ここで言うのは野暮だと思い直し、飲み込んだ。



「それに、拙者は罪を犯しすぎた。黄泉返る資格など、とうに失っているでござるよ」



「どういうことだ?」



「エペタムはね、出会ってすぐの頃は『人喰い刀』と恐れられていたのだよ」



「人喰い!?穏やかじゃないぞ!」



 エルトリーデを襲おうとしたのも、その人喰い刀の真性が現れたのであろうか。何故そんな危ない刀が野放しになっているのか、クロは理解できなかった。



「嫌な過去でござる…まだ記憶が無かった頃、胸の内の衝動に駆られ夜な夜な鞘を飛び出し、罪なき人々を斬って回っていたのでござるよ…その数、五十と六人…」



「そんなに犠牲が…」



「しかしとある晩、今回のように無数の小鬼が攻め入って来たのでござる。拙者はいつものように鞘から飛び出し、小鬼の群れを一晩中斬り続けたのでござる。小鬼を斬るほどに記憶は戻り、翌朝、拙者は己の犯した罪を大いに悔いた。切腹しようにもこの身では己の腹も斬れず、ならば刀として生きることができぬように刃を潰そうと、次の晩には石を斬り続けたでござる。だが切れ味は落ちるどころか、逆に研ぎ澄まされていくばかり」



 エペタムは自分の罪を懺悔(ざんげ)するように、過去を告白していった。隣に座る村長も犠牲になった人々を思い出すのか、時折辛そうな顔をして拳を握り締め、肩を震わせている。



「そんな時、村長は石を斬り嘆く拙者を哀れみ、『罪を償いたいと思ってくれるのならば、私達を脅威から守る剣となってくれ』と、拙者に改めて居場所を与えてくださったのでござる」



「そういうわけで、私とエペタムはこの村を守り続けているのだよ」



「そんなことがあったのか…」



 もし自分がそのようなことをしてしまったら、正気を保つことはできまい。小十郎という人間は、強い精神の持ち主だったのだろう。それを受け入れた村長もまた、強い人に違いない。



「嫌なこと思い出させて悪かった」



「いや、いいでござるよ。誰かに聞いてもらいたいと、心のどこかで思っていたのやもしれん」



 その時、エペタムがカタカタと音を立てて震え始めた。



「地震か?」



「否、これは脅威の接近を示す現象」



「一日に二回も来るとは、客人が来ているのに小鬼も懲りないね…」



 村長は小刻みに震えるエペタムを手に取り立ち上がり、外に出ようとした。



「あ!えっと、俺をエリー、主人の所まで連れて行っちゃくれないか?」



「ふむ…」



 村長はクロの剣先から柄まで見て、重さを予想するような素振りを見せた。クロははっとして、村長ではこんな大剣と刀を同時に持てるわけがないと気が付いた。



「あ、いや、忘れてく…」



「エペタム、力を借りるぞ」



「御意」



 力を借りる、とはどういうことか。村長はエペタムに語りかけ、シャリンという音と共に鞘からその身を抜いた。



「何をする気だ!?」



「心が通じ合う剣と持ち主は、一心同体となる。そのことはまだ知らないようだね」



 村長は鞘を腰の紐に吊るし、空いている方の手でエクスカリバーを軽々と持ち上げた。クロは驚いたが、たしかエルトリーデも『剣が軽くなったように感じる』といったようなことを言っていた。それと同じことが村長とエペタムの間で起こっているのだろう。



「さて、君の主人のもとへ急ぐかね」



「ああ、頼む」

 どうも、肉付き骨です。

 注意しておきますが、この作品内での武器の設定は、完全に伝承に則っているわけではありませんので、悪しからず。(大きさや性質)

 次回更新までは少し長くなりそうです。

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