剣解の相違
エルトリーデを宿屋に運んでもらった後、クロは老人の家に呼ばれたので、クロだけ老人の家に運んでもらった。
どうやら老人はこの村の村長だったようで、村で一番大きな屋敷に住んでいた。
「で、なんで俺だけここに呼ばれたんだ?」
「私はエペタム以外に喋る武器とは話したことが無いのでね。君の主人が目覚めるまで、この老いぼれとエペタムの話し相手になってはくれんかね?」
「そりゃ構わないけど、やっぱりその剣も喋るのか…」
クロは、自分以外に喋る武器がいたら会ってみたいと思っていたが、座っている村長の隣に置かれた剣、エペタムは、エルトリーデを斬ろうとした剣なので話しかけるのに気が引けていた。
「客人、いや客剣、先程はとんだご無礼を。まことに申し訳ない」
「お、おう。あんたがエペタムか」
クロが躊躇っていると、エペタムの方からコンタクトを取ってきた。
エペタムはエクスカリバーと違って剣身が反っていて、刃渡りは五十センチほど、さっき見たときは片側にしか刃が無かった。たしか、刀という種類の剣だったはずだ。
「いかにも、拙者がエペタムでござる。生前の名は小十郎。越後の国の侍でござった」
「あんた生前の記憶があるのか!?」
「私がこいつと出会った当初は、何も覚えていなかったんだがね」
「この村の防衛をしているうちに戻ってきたのでござる」
驚くことに、エペタムはすでに記憶を全て取り戻しているらしい。生前の名、どこに住んでいたのか、どのように生きていたか、何故死んだのか、それら全てを思い出したのだと言う。
「じゃあ、あんたも死神に?」
「死神?いや、拙者をこの世界に生まれさせたのは閻魔様でござる。たしか、『異世界を救うことができたら生き返らせる』と」
「そいつだ!俺もそう言われてこの世界に剣の姿で送られたんだ!」
聞き覚えのある条件。死神はエペタムに違う名を名乗ったようだ。やはりエペタムも生き返るために死神のゲームに参加させられたのか。
「それならエペタム、あんたも一緒に魔王を倒しに行かないか?」
空飛ぶ刀が仲間になってくれれば心強い。エルトリーデは仲間がいらないとか言っていたが、この先を考えるとそうも言っていられないだろう。
しかし、エペタムからの返答は意外なものだった。
「……申し訳ない、共には行けぬ。拙者はもう黄泉返るつもりはないのでござる」
どうも、肉付き骨です。
カタナシャベッタァァァァ!
変なテンションですいません。
隣で座ってる村長さん、暇かもしれないのですが、少々お待ちを。必要なところでは話していただきますので。
次回更新は早めにできるかと思います。




