影に潜む剣
「いいのか旦那?あのまま逃がして」
町の誰も通らない暗く寂れた小路で、彼らは聖剣エクスカリバーを携えた者が一軒の宿に入っていくのを物陰から覗きながら、ひっそりと相談事をしていた。
「剣が主にものを言うな。蜥蜴戦士が容易く撃破されたのだ。迂闊に手は出せぬ」
もしも彼らが人前で話をしていたら、気が触れていると思われるか、大道芸かと思われるだろう。
彼らは、剣と人間なのだから。
「旦那も頑固だね。いい加減オレサマの能力を使っちまってもいいだろうに」
その剣は、柄が黄金に輝いていた。
「私はそういう外道な力は好まん。拾われた相手が悪かったな」
その男は二メートルの巨躯であり、黒い外套で全身を覆っていた。
「まったくだぜ。欲望にまみれた人間に拾ってもらえればすぐに生き返れたのによぉ」
「三度まで悪しき願いを叶える代わりに、持ち主に死をもたらす剣。それがお前の正体だとすぐに分かったのでな、《魔剣テルフィング》よ」
その剣の名は魔剣テルフィング。願いと引き換えに命を喰らう剣。
「本当にツいてねぇなぁ。拾われた時点で、三つあった条件のうち二つも潰されちまったんだからなぁ、《魔神べリアル》殿?」
その者の名は魔神ベリアル。魔王軍四天王が一角の大悪魔。
「ふん、ならばその最後の条件を果たせば良かろう?」
「ったりめぇだ。オレサマは旦那にこの身を貸そう。その代わりオレサマの目的達成にも協力してもらうぜ?」
「つくづく面白い魔剣だ。しかし今日は引く。あやつの纏う気迫は危険だ」
「あいよ、旦那がそう言うんじゃ仕方ねぇな」
彼らは、どこからか溢れ出てきた黒い霧に包まれ、霧が消えた時には彼らの姿はすでにそこには無かった。
どうも、肉付き骨です。
とうとう出ましたよ、敵サイドの喋る剣が。
そしていきなりの大悪魔。早すぎた感が否めませんな。
『果たして彼らの正体は!?』とかやりたかったのですが、あまりモヤをかけたままでは忘れてしまいそうだったので、勢いで名前をバラしてしまいました…
敵サイドで残る謎はテルフィングの生前ですかね。(まだ固まってない)
次回は『エクスカリバー、初めてのおつかい』です。
嘘です。エクスカリバーは動けません。
つまらない冗談にお付き合いいただき、まことに申し訳ありませんm(__)m




