軌跡
鬼達はヒェロナの民に対し、毎月税の取り立てを行った。
いわゆる生贄である。
ヒェロナの民はおとなしく、各種族の若い女を交代で差し出す他なかった。
鬼の支配が始まってから10年が過ぎたころ、ハナカという18歳の人間の娘が年貢として鬼に渡された。
取り立て役であった赤鬼のアカシは鬼の本拠地であるサタナスまでハナカを運ぶ途中、アカシはハナカの美しさに心を奪われ、サタナスに運ぶのをためらう。
ハナカも最初は鬼であるアカシに対し、嫌悪感を抱いていたが、アカシとの旅を通して、アカシの優しさに触れ、次第に心を開いていく。
サタナスに近づくにつれ、アカシはハナカへの思いが強くなり、サタナス直前になって、ハナカと共に逃避行することを決意する。
アカシの行動に激怒した鬼軍最高司令官である青鬼のオーガは刺客として青鬼最強の殺し屋ブラオを差し向ける。
アカシとハナカは逃避行の末、羊の種族のメリーが村長をしているコチ村に身を潜めることとなる。
平穏な日々を過ごす2人。
いつしか2人の間には、愛が芽生えていた。そして、ハナカのお腹には種族を超えた命が芽生えていた…
しかし、平和はいつまでも続かない。
ブラオに見つかっていまい、コチ村の民ごと皆殺しにかかる。
アカシはハナカを逃がすため、村長のメリーとその娘アリエスにハナカを託し、ブラオと戦うも敗れてしまう。
ハナカは逃げる際に重症を負ってしまう。
ハナカは最後の力を振り絞って、男の子を出産する。
ハナカはメリーに子供を託し、息を引き取った。
メリーは子供を鬼の目から隠すために、小舟に乗せて川に流した。
それが唯一その子が幸せに暮らすことのできる道だと信じて…
川の下流に位置する人の暮らす小さな集落にて、人間の年配の女性テルノがその小舟を見つけ拾うところから、この物語の主人公である男の子の運命が始まる。