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はじまりは……

 盛大な音が教室に響き、次いで耳が痛くなるくらいの静寂が辺りを満たした。

 教室の端と、廊下にまでいる生徒達が見守るのは二人の男女。拳を握りしめて息を荒くする一人の女子生徒と、その拳にやられたであろう腫れた頬を押さえて倒れる男子生徒だ。


「いって……雨宮! こんなことしてただですむと思ってんじゃねぇだろうな!?」

「うっせぇ、このボケナス!! もとはと言えばてめぇが悪いんだろうが!! 当然の報いだ!」

「んだと!? ……ぐっ!!」


 セーラー服を身にまとった女子高生は、倒れたままの男子生徒の胸を思い切り踏んづけた。ひらりと揺れる柔らかいスカートとは反対に、少女の目は燃え滾るほどの怒りに染まっている。


「っの! 俺の親父が誰か分かって……! ぐはぁ!」

「はっ! それが何だってんだ! てめぇがどこのボンボンだろうがな、人を傷つけて笑ってられるような最低人間は殴られて当然なんだよ!」


 そう言いながら、少女は手近に置いてあった英和辞書を振り上げる。

 ギョッとした顔で後ずさろうとする少年は、しかし少女の足に抑え込まれて身動きができなかった。


「ちょ、ちょ! やめ! おいお前ら見てないで止めろよ! 助けろ!」

「てめぇみてぇなダメ人間、いっぺん死んで出直してこい!!」

「ちょ、待っ……!! う、うわぁぁぁぁ!!」

「あ、雨宮待てー!!」


 騒ぎを聞きつけた教師が入り口から静止をかけるが時すでに遅し。

 学内を騒然とさせたこの暴力事件が起きたのは、当事者達が入学してわずか一ヶ月ちょっと。爽やかな風が吹く五月の話だった。


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