第1話 見知らぬ世界
前回の投稿からだいぶ日が経ってしまいました。
ストック? そんな物は(ry
「…………う……ん?」
強い光を感じ、瑞姫は意識を浮上させ、目を覚ました。
「お早うございます。お嬢様」
耳がダンディーな声を知覚する。言語は日本語のように聞こえるが……。
瑞姫はとりあえず幻聴の類をシャットアウトし、盛大な欠伸をした。
「……知らない……天井だ」
もはやお約束のネタを当たり前のように発する。緊張感など欠片も無い。
(どっかに飛んだのかな?)
体を起こし、辺りを見渡すと、どうやらベッドに寝かされていたらしい。
体が床よりも高い位置にある事が視覚で理解できる。
さらに周囲を見渡すと、間違っても日本とは思えないようなアンティーク家具が、それなりに広さのある部屋に散在している。
そして瑞姫のすぐそばには―――
「ご機嫌はいかがですか?」
「幻聴じゃなかったのね……」
……執事がいた。マンガやアニメに出てくるような壮年の執事が。超ダンディーな奴が。
――――――――――――
「さて、まずは自己紹介を。わたくし、ヴァトラーと申します。以後お見知りおきを」
「執事? 確かに服装は執事っぽいけど……」
「いえ、わたくしの名前がヴァトラーでございます」
そう言って執事改めヴァトラーは瑞姫のボケを華麗にスルーし、恭しく一礼した。
とても日本人とは思えない名前だ。なのに日本語が流暢なのは何故なのか。
「わたしは瑞姫。赤川瑞姫」
「では今後は瑞姫様とお呼びします。わたくしはこれにて失礼させて頂きますが、御用があれば部屋にある電話でお申し付け下さい」
「あ、待って! いくつか聞きたい事があるんだけれど」
瑞姫は部屋から退出しようとするヴァトラーを呼びとめた。何故か? 自身が抱える疑問をを消化するためだ。
「何でしょう。答えられる範囲でお答えしますが」
ヴァトラーは再び瑞姫の方へ向き直り、瑞姫の質問に耳を傾ける。
「とりあえず、ここどこ?」
「ここはヴェルジエル大陸中央部に位置する大穴、通称『バベルの逆穴』と呼ばれる場所でございます」
ヴェルジエル? バベルの逆穴? 瑞姫が聞いた事の無い単語が飛び出してきた。
「貴方は何者?」
「わたくしの名は先程申し上げた通り、ヴァトラーでございます。この城で魔王様の執事を務めております、悪魔でございます」
ヴァトラーの言葉に瑞姫は引っ掛かりを覚えた。キーワードは「城」と「魔王」。
「ふーん……じゃあここって魔王の城?」
思い付きでそう言ってみる瑞姫だったが……
「左様で御座います」
「…………な、なんだってー。」
ヴァトラーはあっさりと肯定した。
瑞姫はどう反応すれば良いのか分からず、とりあえず当たり障りの無い反応を返してみた。
「ご安心ください。取って食おうなど露ほども考えてはおりません」
そりゃそうだ。取って食うつもりだったら目覚める前に死んでいる。
「……なんで私は生きてるの?」
ヴァトラーは瑞姫が持つ悪魔像とは全く異なっている。何処からともなく現れたニンゲンの小娘を襲いもせず、ベッドに寝せて介抱する悪魔なんぞ聞いたことが無い。
「……それは―――」
瑞姫の問いに答えようとしたヴァトラーだが、何かに気付いたようにハッと顔を上げた。
「どうしたの?」
不審に思った瑞姫はヴァトラーに尋ねた。
ヴァトラーは真剣な眼差しで瑞姫を見つめ、言った。
「敵が城内に侵入しました」