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DOLL~機械少女~『歯車』

作者: 柿野種

 1990年5月1日大雨

ゴミ捨て場の塀の上でちょこんと座っていた私。灰色の空を眺めていた。

ふと頭上が青くなった。雨は止んだ。

1枚のビニールが空に思えたのも、過去未来永久に無くこの時だけだろう。

私は…拾われた


1991年4月1日

主の家に友達がやってきた。

私は何をするでもなく。主とその友達が遊んでいるのをただ眺めている。

ピアノの上に座ってただその風景を傍観している。『座っている』という表現は無粋なのかもしれない。飾り物の足を地面につけてあたかも立っているかのように振る舞っている。

この足だって元々は動いていた。今でこそ無意味に等しい物だが昔は…

何もかも私が人間じゃないから…。

私の機械仕掛けの心臓は既に錆びついている。でも、私は頑張った。彼が私の背中のネジを巻いたら必死に足を動かそうとした。

けれど…動かなかった

私は唯のDOLL。自分の意志ではどうにもならない。


1991年4月25日

主の家に友達がやってきた。

私は何をするでもなく。主とその友達が遊んでいるのをただ眺めている。

ピアノの上に座ってただその風景を傍観している。『座っている』という表現は無粋なのかもしれない。飾り物の足を地面につけてあたかも立っているかのように振る舞っている。

この風景も飽きてしまった。不思議な事に飽きすぎると感…、歯車が1周して何も思わなくなってくる。

ついついぼーとしながら考え事をする。

考え事、というよりは決して叶わない夢物語の妄想

私には夢がある…人間になって主と結婚をするという夢が。

決して叶わない夢…。


1991年4月29日

主の家に友達がやってきた。

私は何をするでもなく。主とその友達が遊んでいるのをただ眺めている。

ピアノの上に座ってただその風景を傍観している。『座っている』という表現は無粋なのかもしれない。飾り物の足を地面につけてあたかも立っているかのように振る舞っている。

この風景も飽きてしまった。不思議な事に飽きすぎると感…、歯車が1周して何も思わなくなってくる。

ふと窓の外をみると、今日はあの日の時のような淀んだ曇り空。

主が青いカーテンを閉めた。

もうあの日のような事は思わない。

いや、もう何も思えない。

体の中からしきりに聞こえる金属音が次第に大きくなってきている。何かが欠けた鼓動が聞こえる。


 1991年4月29日

夜。

主が電気を消した。

私ももう寝ないといけない。


1991年4月30日

朝。

ここはどこだろうか…。

多くの人が座っている室内。

大きな十字架

私は誰だろうか…。

今まで着たことも無い綺麗な白いドレス。

自分の意志で動かせる手足。胸から聞こえる独特の鼓動。聞いたことのない金属音…

これが…人間?

隣に居るのは…

黒いタキシードを身に待った主。

分かった!これは…これが結婚式なんだ!

と同時に…これは夢?

体はとても軽いのに割り切れない虚無感

人間になんて…なれるわけないわよね。

「夢のよう…」

私の声ってこんな感じだったんだ

『夢じゃないよ』

隣から聞こえる低い声。

その声を聴いた途端、謎の説得力が私の中に芽生えた。

これは夢じゃない…



  1991年5月1日大雨

ゴミ捨て場の塀の上でちょこんと座っている人形。灰色に雲に苛まれていた。

この人形は捨てられてから1年以上

誰にも拾われずこの地で眠っている…


はぁ…いつ現場復帰できっかなー

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