6話目 過去③
中学2年生の告白以来、私は本気で怜央君を追いかけ始めた。
毎日電話はお昼と夜に1回ずつ。
メールは一日5通送る。
一人暮らしし始めた怜央君の家の合鍵を貰っては、なるべく毎日通い、通えない日はメールをいつもより多くした。
怜央君がバイトを始めた学習塾にもちょくちょく顔を出し、塾の人たちと仲良くなってしまった。
それでも、電話に出てくれるのは夜だけだし、5分程度ほどしか話してくれない。
メールも1日1通返事が来たらいい方だし、合鍵を貰って家にいても、怜央君が帰ってくるのは夜遅いし、塾ではあまり口をきいてくれないしで、あまり怜央君に歓迎されていないのは分かっていた。
「実樹、お前考査前なのにここにいていいのか?」
「うん。自分の家より怜央君の家の方がはかどるし。」
テスト前にも入り浸り、なるべく一緒にいて怜央君に自分のことをアピールする。
休みの日には無理やり怜央君とお出かけしてもらったり、出来るだけの努力はしていた。
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3年間、そうやって努力した。
私は高校2年生なって、怜央君も大学4年生。
お互いが忙しくなり、私が怜央君の家に行けるのも、土曜日だけだ。
それでも、私からなるべくメールはたくさんしていたし、2回の電話も欠かさなかった。
でも、3年間アタックし続けたのに、怜央君からメールが来たことはほとんどなかった。
来るのは、ドタキャンの連絡だけ。
もう、怜央君の気持ちがあまりこっちを向いていないことは分かっていた。
一つ救いだったのは、怜央君が女の人と長続きしないこと。
大体は3カ月弱で別れてしまう。
理由は分からないけど、怜央君はいつも振られる方のようだった。
「もしもし、怜央君。来週の月曜日、暇?私、建校記念日で休みだから、どこか行こうよ。」
怜央君は土日にバイトを入れていたので、私たちはあまり遊びに行くことはなかった。
だが、月曜日は2限までしか入れていないので、大丈夫かと思ったのだ。
「ああ・・・そうだな。それにしても疲れたな・・・今日の実習大変だったんだよ。悪い、実樹。また連絡するわ。じゃあな。」
次の日。やっぱり彼女と予定ができたから、といってキャンセルされたのを目の当たりにして、少し心に限界を感じていた。
そして、怜央君の彼女の言葉。
私はようやく怜央君から離れる決意をしたのだった。