4話目 過去①
私が、怜央君に出会ったのは、14年も前のことだ。
当時3歳だった私と、8歳だった怜央君に共通の遊びなんてなかっただろうに、一緒に遊んでくれた。
かくれんぼでは一緒に隠れてくれたし、色鬼ではわざと私と同じペースで走ってくれた。
そのおかげで、私は近所の子と走り回れるようになったのだ。
「怜央君好き!怜央君と結婚するの!」
そう言ったのは、5歳のとき。
当時流行っていたドラマの影響で、早熟な私は格好よくて優しい怜央君と結婚することを夢見ていた。
「うん、結婚しようね」
子供ながらに、女の子の顔をつぶしてはいけないと思ったのか、私のプロポーズを受け入れてくれた怜央君に、私は飛びついた。
そのころから進学塾に行き始めた怜央君はだんだんと忙しくなり、あまり遊べなくなってきた。
それでも、幼稚園から帰っては毎日2つ隣の怜央君の家に遊びに行っては、おばさんや真美ちゃん(怜央君のお姉ちゃん)とお話したり、ピアノを弾いたりしていた。
それから2年後、怜央君は日本で一番の進学校である魁皇学園に合格した。
「ねぇ、ママ。私、怜央君と同じ中学入りたい!」
「うーん、でもね・・・魁皇は男子校だったでしょ?実樹は入れないのよ。
その代り、近くにある慶林館女子だったら入れるわよ。同じ駅だから一緒に通えるかもしれないし。」
私はそれを聞いて、絶対慶林館に受かりたいと思った。
慶林館は女子の中ではtop3に入る、いわゆる御三家と呼ばれるうちの一つだ。
東大には毎年学年の4分の1が入る。
それをママから聞いて驚いたし、あまり私は勉強が得意ではなかったので自信がなかったが、それでも小学2年生である今から頑張ればきっと入れると思い、頑張った。
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桜の花が咲く4月、私は慶林館女子中学校の前でお母さんと、怜央君と写真を撮っていた。
門の中に入っていく新入生がみんな怜央君に見とれているのが分かり、少し優越感を感じた。
「怜央君、実樹と二人で撮ってあげて。」
快く承諾してくれた怜央君に腕をからませると、私は最高の笑顔で怜央君と写真に写り、それを生徒手帳に挟んでいつも持ち歩くことにした。