13話目 想い
目が覚めた。
隣には裸の怜央君が眠っている。
自分も裸だ。
昨日の記憶がよみがえってきて、まず恥ずかしくなり、次に悲しくなる。
私達、恋人でもないのにあんなことを・・・
怜央君をあきらめようと思ったのに、あんなことをされても嫌いになれないなんて・・・
こんなの、隆弘に対する裏切りだ・・・
「何、起きたの?」
「きゃっ」
急に腰を抱き寄せられて、首筋にキスをされる。
恥ずかしくて、苦しくて、でも、それよりなにより嬉しくて。
自分が嫌だ。
隆弘と付き合っているのに、怜央君に抱かれて、嬉しく思う自分がいる。
「実樹、彼氏と別れなさい。今すぐ。」
「っ!」
私は理不尽すぎる命令に、目を見開いた。
信じられない・・・
自分には彼女がいるくせに。
私は直接怜央君の命令に触れず、他の話題に持って行った。
「どうしてあんなことをしたの?怜央君の彼女、妊娠してるんでしょ?・・・結婚、するんでしょう?」
目の前の怜央君は、意味が分からないといった風に眉をしかめる。
この期に及んで白を切る気?
「御使さん!御使ありささん!茶髪でスタイルがよくて気の強そうな人!」
首をひねっているところみると、本当に彼は分からないらしい。
まぁしょうがないか。
怜央君の彼女はみんなそんな感じの人だ。
「えっと、3カ月くらい前付き合っていた人!」
そこまで言うとようやく誰かわかったらしく、怜央君は「ああ」と言った。
そして、心底機嫌が悪くなかったように息を吐く。
「いつも通りのつまらないやつだ。3か月前に別れた。妊娠なんてしていない。結婚もしない。」
嘘をついている感じではない。
ということは、私は嘘に踊らされたということだろうか。
少し悲しいし、だまされたことは悔しいけど、だまされた私が悪いのかもしれない。
怜央君は私の方をちらっと見ると、少しうつむいて口を開き、ぽつりともらした。
「昨日は、無理矢理、悪かった。」
怜央君の謝罪に少し驚く。
彼が私に謝るのなんて、出掛ける約束をドタキャンするときだけだ。
しかも、あまり悪く思っていないといった感じの謝罪だ。それになれてしまったからこそ、この謝罪はかなり驚いた。
彼はばつのわるそうな顔を崩し、真剣な顔をしてじっと私を見る。
「お前は何か、俺に言うことはないのか」
そんなことを言われても・・・
つい無言になってしまう。
「俺のことをどう思っているんだ?」
そんなの、ずっと前から決まってる。
好き。
大好き。
愛してる。
でも、色々なことを考慮すると、言葉にすることはできなかった。
そろそろクライマックスです!
最後までお付き合いください(*^_^*)