11話目 理不尽な怒り
ついた場所は、おなじみの怜央君のマンションだった。
彼はマンションの駐車場に車を入れると、自分は車から降りる。
大学に入ってから一人暮らしをし始めた怜央君だったが、家賃以外は自分ですべて出しているらしい。
「ほら、降りろ。」
「・・・やだ。」
そう言うと、怜央君は怒ったように私の方のドアを開けて、無理やり私を引っ張りだした。
そしてそのまま私を肩に担ぐ。
「痛いっ」
「うるさい。」
毎日通った玄関から10階の怜央君の部屋まで、私を担いだままずんずん歩く。
途中で誰にも会わなかったのは私にとって良かったのか、悪かったのか。
怜央君は自分の部屋まで無言で歩き、中に入ってから私をソファに下した。
「それで?どう言い訳するつもりだ?」
「・・・言い訳?」
言い訳ってどういうことだろう?
私は自分の指先を見つめた。
「こっち見ろよ。」
ぐいっと顎を引かれて無理矢理怜央君を見させられる。
ずっと大好きだった顔。
気持ちに区切りをつけたと思ったのに、顔を見るだけでこんなにもドキドキする。
隆弘には感じないのに。
「なんで、俺を避けたわけ?随分自分勝手だよな。」
それを聞いてかっと来たけれど、あそこまで好き好き言って押し掛けていたのに急に拒否し始めるなんて、確かに自分勝手だったかもしれないと自己嫌悪する。
黙ったままの私にいらっときたのか、怜央君は煙草を吸い始めた。
「私、ごめんね。今まで・・・押し掛けて、迷惑、かけちゃったよね。でも、もう大丈夫。迷惑かけたりしない。」
その言葉に、怜央君は右の眉を少し上げた。
彼がいぶかしげに思っているときの癖だ。
「私、彼氏できたの。もう怜央君に付きまとわない。だから・・・きゃっ!!」
気付くと、私は天井を背景に怜央君を見ていた。。
にやりと口の端をあげて、笑っている。
だけど、本当に心から笑っているわけではない。
目が、怖いから。
「お前、ふざけてるのか?」
私はどうやらソファに押し倒されているようだった。
そのまま顔を近づけてくる。
「やだっ!私・・・」
私は頭を振って怜央君の顔を避けようとする。