10話目 対峙
校門に行くと、柱のところに怜央君が寄り掛かるように立っていた。
寄り掛かっているだけなのに、まるでモデルのようで、彼を見に来た女子たちは色めき立っている。
私の姿を見ると、無表情で近づいてくる。
「実樹・・・」
「いたっ」
怜央君は私の手をつかむと、無理矢理引っ張って歩きだした。
誰かが、きゃ~っと叫んでいる。
私は掴まれた手を振って一生懸命逃げようとした。
「やだっ!なんで来たの?」
「騒ぐなよ。ここじゃ目立つ。」
そう言われてしまうとそれ以上抵抗することなんてできない。
もう十分目立っているけれども。
掴まれた腕が少し痛い。
「離して!逃げないから。」
そう言うと彼は馬鹿にするように鼻で笑った。まるで私の言うことなんて何も信じない、といった風に。
先ほどから、すごく嫌な感じだ。
そして、ますます腕を強く握られる。
「ほら、乗れよ。」
怜央君はおなじみの青色のBMWの助手席を開けると、私のことを押しこんだ。
自分は運転席に回ると入ってシートベルトをしめる。
そしてそのまま私のシートベルトも締めると、そのまま急発進した。
一体どこに向かっているのだろう・・・?
「怜央君、私、今日塾があって・・・」
彼は私の言葉を無視すると、窓を開けて煙草を吸い始めた。
相当苛々しているようだ。
今日は塾にいけなくなるのを覚悟しなくてはいけないかもしれない。
と、なると隆弘に連絡しなくては。
そう思って携帯を取り出すと、次の瞬間それは手の中からなくなっていた。
「誰に連絡するんだ?」
「え・・・」
怜央君が私の携帯を持っている。
そのまま自分のポケットに入れてしまう。
「俺のことは着拒したくせに、一体誰に連絡する気だ?」
「着拒なんて・・・」
「しただろ。」
したけど。
メールも、電話も受け取らないように設定したけど。
ちなみに、自分の携帯の中の怜央君のアドレスと電話番号を消去して、合鍵はママ経由で怜央君に返しておいてもらった。
それは自分の気持ちに区切りをつけるためだった。