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1話目 決意
「ねぇ、これ以上怜央に近づくのはやめてよ。迷惑なの、私も、怜央も!私たち結婚するし、いい加減邪魔なのよ!」
どさっという音がして、間接的に自分がバッグを落としたことを知る。
目の前のこの女の人は、一体何を言っているのだろうか。
投げつけられた言葉が、耳をすり抜けてしまいそう。
「ねぇ、聞いてるの?!私、お腹に怜央の子供もいるのよ!」
その言葉が正気に戻してくれた。
目の前の女のお腹を見ると、モデルよりもずっと細くて、到底妊娠しているなんて思えない。
それでも、きっと本当のことなのだろう。
いい、機会かもしれない。
「分かりました。すみません。」
私は、それだけ言うと先ほどおとしたバッグを拾って、わき目も振らず、走った。
悔しかった。
悲しかった。
でも、心の底では分かっていたのかもしれない。
彼が、私を見てくれないことを。




