歌と歌い手
知らない歌声路上に響く高い音色
耳を貸すのは何人か
寂しい歌はいつか大勢の耳に止まる事を夢に見て
止まる事を知らずにしなやかに闇に解けて消えて分からなくなる
それが君の願いなのか
歌よはじけて淡い夢に消えないで
叶わない事を歌い手は思う
それが
歌 を は じ け さ せ て い る と も 知 ら ず
名前がついたメロディは歌であると誰かが言った
名前がつくと魂が宿ると誰かが言った
もしそれが本当なら
それが君の願いなのか
歌よはじけて月さえない闇空に消えないで
叶わない事だと知っても歌い手は思う
たとえ
歌 が そ れ を 拒 ん で い る 事 を 知 ら ず
それが
歌 を は じ け さ せ て い る と も 知 ら ず
もしそれを歌い手が
もしそれを知っていたのなら
歌よ――――どうする?
流れるメロディ闇空8時45分に解けだした
通りすぎる人々を包んで絡めて通り抜けて
いつの間にか闇空9時55分に時計針刻む
歌い手の周りに人ばかり集まって手を叩く音がする
寂しい歌は今寂しい歌は今どうなった?と誰かが言った
日の光の下に出て何を思うのかと誰かが言った
その答は歌だけが知っている正確には歌い手だって
知ってるそんな事だと楽しそうな表情をして
最後に笑い声はどこからきこえた幸せな
笑い声いつまでも。
街角の決して主役にならない彼らの物語。