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十指
親指だけでは足りないのです。
中指なんて軽いでしょ。
薬指はお約束です。
小指はたいして重くないわ。
そうだ、人差し指もおまけしまょう。
『指切り』というのがあるけれど、あれは指を切るんじゃないわ。
千の針を飲ませると 脅し、約束を貼り付けるの。
けれど、私が欲しいのはそんな約束なんかじゃないの
重く 苦しく 窒息しそうな 半固形体の愛だわ
たとえ、君が望まなくとも。私が望むようにしてあげる。
狂愛？ 何とでも言うがいいわ。
私が望むのは
そ れ だ け よ ！
その① 親指は指の中で
一番、太くて 異質だわ
それを貴方にあげましょうか。
私の唯一の 異端を
その② 中指は指の中で
一番、長くて 目立つのよ
それを貴方にあげましょうか。
私の唯一の 彩りを
その③ 薬指は指の中で
一番、よくある 首輪の位置
それを貴方にあげましょうか。
私の唯一の 常識を
その④ 小指は指の中で
一番、小さくて 醜いわ
それを貴方にあげましょうか。
私の唯一の ゴミ達磨を
その⑤ 人差し指は指の中で
一番、万能で 優秀よ
それを貴方にあげましょうか。
私の唯一の 生命線を
右手 左手 どちらがいい？
貴方に、選ばせてあげましょう。
それとも、両手がいいかしら？
そっちのほうが 重く 苦しくて 殺せそう！
《恋ナンテ 知ナイワ 貴方ガ 教エテクレルンデショ》
《痛イノ 苦シイノ ソノ方ガ 記憶ニ 焦ゲ付クハズダワ》
《コノ感情ヲ 愛ト呼バズシテ 何ト呼ブトイウノ》
《愛、恋、情、愛、恋、憎、愛、恋、害……》
たとえ、貴方が欲さなくとも
私が、欲すようにしてあげる
だから、ほうら、逃げないで
私の全部
じ っ し あ げ る ！
狂愛を君に捧げようか。
