第六話 潜入はつらいよ①
帝国の襲撃者を退けた寅二郎たちは、
礼拝堂へと移り今後について話し合っていた。
「魔弾銃製作工場はコルンハーグにある。
その地図、建物の見取り図まで入っていた」
マーリンが密書を取り出す。
寅二郎たちが覗き込むと、
命がけで入手したのだろう、所々血で滲んでいた。
「行くしかないな。このままでは五大国の均衡も崩れかねん」
「よっしゃ、任せろ」やる気の二人だったが、リラは遠慮がちに言った。
「私はどうすれば」
リラは迷っていた。
この先待ち受ける困難。自分が足手まといになる懸念。
「正直この先は大変な道行きになるだろう。しかし、この場に残っても同じこと」
シドはあえて無表情に言った。
「リラちゅわんはどうしたい?」寅二郎がリラをまっすぐに見つめて言った。
「私は……」リラの握られた拳は震えていた。
「私は一緒に行きたい。あの人の意思もある。
何よりこのまま傍観者に戻るなんて私自身が納得できない!」
リラはまっすぐに寅二郎を見返した。涙で霞んでいる瞳で。
「分かった。なら俺が守ってやる!リラは俺が守る」寅二郎はシドに言った。
シドは胸にとげが刺さったような痛みを感じていた。
しかし、それを隠すようにマーリンに向き直る。
「だそうだ。マーリン、こちらも大変になるだろうが俺たちは行く」
「分かった。こちらはどうとでもするさ。
せめて君たちの旅の道行きに幸あらんことを祈ろう」
最早、初対面時の頼りない演技は捨て、
大司祭の風格を漂わせるマーリンが言った。
「馬を回収して、コルンハーグに潜入するぞ。
魔王軍との戦争中でもある、気は抜けないぞ」
マーリンから密書を受け取り、三人は大聖堂を出た。
「リラちゅわん、守ってやるからもっとこっちへ。ほらこの腕の中に」
「馬鹿、歩きづらいでしょ」
「さっきの雰囲気が台無しだ。ホントお前ってやつは」
三人のやり取りを聞きながら、マーリンは見送っていた。
(リラ、やはりあの娘は私の……どうか無事で)
リラは小さい頃、生き別れた妹、その確信をもってマーリンは三人の姿が見えなくなっても見送り続けるのだった。




