第五話 陰謀はつらいよ④
礼拝堂とは打って変わった質素な客間。
各々席に座りすぐにシドが切り出した。
「あなた宛てにこれを」
と、マーリンに密書を渡した。
「こ、これは呪による封印!
私にしか開けられない仕組み」
マーリンが目を見張る。
「ぜひ、内容を教えてもらいたい。
ここにいるリラにも関りがあるかも知れないので」
シドがリラを見ると、緊張しているのが分かった。
「わかりました。それでは」
マーリンが密書に触れると赤黒い光が立ち上り、封印が解けた。
黙読していたマーリンの目が見開かれる。
そして目に力が宿っていく。
「何ということだ。帝国が秘密裏に魔族と取引?
魔弾銃を研究・開発しているだと!」
「冗談じゃねぇ。
こんなもんバレたら戦争じゃ済まねぇぞ」寅二郎たちに衝撃が走る。
密書にはコルンハーグにて魔弾銃の開発の最終段階に入っていること。近いうちに実戦に投入される可能性があることが記されていた。
「魔族と協力して魔弾銃?
この世界じゃ銃は失われた技術だと聞いたぞ?」
寅二郎がシドとの会話を思い出す。
「ああ、魔族に銃は効果が薄い。
しかし魔弾銃はマナを込めて打ち出すため、
“魔族にも効果がある”とはされている」
シドが言いよどむ。
「だが、マナを込める際、
必要以上にマナを吸い取られ死んでしまうものが続出した。
それで魔弾銃は禁忌の業とされたのだよ」と、マーリンが後を継いだ。
「そんなやべぇモンを帝国が秘密で作っているというのかよ」
「どうやら内部告発者が私に伝えたくて密書に認めたようだ」
「あの人がそんなことを」リラはアムステルドで殺された上客の顔を思い出す。
「しかし、あの男はなぜリラにあんなことを?」寅二郎が疑問を口にする。
シドが深く思案する。
――内部告発者は聖ローマン教を使ってリ・エスティーネ王国や五大国に知らしめようとしていた。そしてその中で大司祭マーリンに接触するため身辺を調べていた。マーリンに身内がいれば弱点となりうる。そして身内が発覚したとすれば…身内と接触していたとすれば…その身内とはつまり……
ガシャン!
シドの思案を遮るタイミングで窓から発煙筒が投げ入れられた!
「何だ!」
「煙は吸うな。ヤバいぞ!部屋を出ろ!」
すぐさま廊下へと飛び出す面々。
廊下の両側から音も立てず襲撃者が走り寄ってくるのが見えた。
「トラジロウは右を!俺は左を抑える!」
「おう!」すぐさま二人は対処に当たる。
シドが襲撃者と剣を交えたその一方、
「これでもくらいなぁ!」寅二郎が大上段から剣を振り下ろす!襲撃者は低い姿勢のまま受け止めるが、寅二郎が全力で押し込み肩を割く!すると、割かれた肩から黒い煙が上がる。
「何だぁ?お前それ!」
その瞬間、襲撃者は一気に跳ね退き逃げ出した。
「ありがとう。助かった」マーリンはシドに癒しの魔法をかけていた。
「いや、逃がしてしまったな。面倒なことになりそうだ」
リラも寅二郎に近寄ると、詠唱を開始した。
「女神よ──その温き慈愛を貸し与えたまえ…!」
「光よ、傷を照らし痛みを溶かす柔き祝福となれ…!」
「仲間の命を癒し、再び歩む力を与えたまえ──
《ホーリー・ヒール》!」
「リラちゃわんの癒し、効くねぇ~」
癒しの光を浴びながら、
寅二郎はリラに抱き着こうとし、
「うるさい、集中が切れるでしょ」と顔を押し退けられていた。
その光景を見ながら、マーリンは何かを思い出しそうになった。
「何か、懐かしいような…」
帝国の陰謀、マーリンとリラの関係、コルンハーグでの激闘。
事態が大きく動き出そうとしていた――。




